田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国で診療拒否事件が多発、厳格な「ゼロコロナ政策」が社会問題に

妊婦の診療拒否事件はなぜ起こったのか(西安高新病院。Getty Images)

妊婦の診療拒否事件はなぜ起こったのか(西安高新病院。Getty Images)

 中国では年明け早々に起きた「診療拒否事件」が大きな話題となっている。1月1日19時、陝西省西安市に住む妊婦が、お腹が痛くなったため120番(救急車を呼ぶための番号)に電話した。しかし、何度かけても話し中、繋がらないので仕方なく110番にかけて警察に連絡、どうにか西安高新病院まで送ってもらうことができた。既にこの時点で20時を回っていた。

 しかし、同妊婦のPCR検査証明の有効期限が4時間前に切れていたため、この病院は彼女を院内に入れることを認めなかった。そのため、妊婦は椅子に腰かけたまま、大量の出血を起こした状態で入り口付近に放置されるままとなった。この時の様子は本人が自ら撮影しており、その一部が親族によってネットで公開されている。

 病院側は22時過ぎになり、彼女が出血多量で危険な状態であることにようやく気づき、そこで初めて院内に運び入れ、そのまま緊急手術を行った。

 その結果、彼女の命は何とか取り留めたが、8か月目に入っていた赤ちゃんは流産してしまった。1月4日、被害を受けた妊婦の家族がSNS上に詳細を公開、それが一気に拡散され、中国国民が広くこの事件を知るようになった。

 厳格なゼロコロナ政策が原因で診療拒否となり、それが社会問題となった件は他にもある。2021年12月31日16時40分、心筋梗塞のため39歳の男性が死亡した件で、大河報(河南日報報業集団)は以下のように報じている。

〈西安市に住む男性が突然息苦しさを感じたため、自ら120番に電話をかけ救急車を呼ぼうとしたが繋がらず、それでも連絡を受けた友人の手助けがあって、何とか救急車に乗ることはできた。しかし、48時間以内に行ったPCR検査証明を持っていなかったため、病院側は受け入れを拒否。3件の病院をたらい回しにされた後、4件目でようやく受け入れてもらえたものの、ベッドに横たえたときには既に心停止状態であった〉

 西安市では2021年12月9日、中国本土由来の新型コロナウイルス感染者が出現して以来、感染者数が急拡大した。すぐさま、外出制限を含め厳しい防疫体制が敷かれたのだが、こうした厳戒態勢の中での痛ましい事故である。

 病院側は政府より、規則の厳守を求められる。もし、規則違反が原因で感染が拡大するようなことにでもなったら、職を失う程度では済まされない。現場の職員は上司から厳しく指導を受けており、自己の判断で検査証明のない者を院内に入れるわけにはいかない。ネット上の世論も、そうした点を冷静に判断してか、病院に対する激しい批判は少ないようだ。

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