メガバンクの新社長に就任した兄と、政権の中枢に入り込んだ弟。期せずして財界、政界両方の「キーマン」となった兄弟が、日本経済浮沈のカギを握る──。【全3回の第1回】
日本を代表する3大メガバンクの一角、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)の新社長に木原正裕・同社執行役兼みずほ銀行常務が“2階級特進”で就任することが決まった。平成入行組の56歳とメガバンクのトップとしては異例の若さで、相次ぐ大規模システム障害で信用が傷ついたみずほの再建を担う。
この抜擢人事は金融界を驚かせた。ベテラン金融ジャーナリスト・浪川攻氏はこう語る。
「はっきり言って、木原さんという人は今まで見たこともなかった。発表会見で他の金融担当記者に聞いても、誰も木原さんのことを知らなかった。彼の経歴を見ると、資産運用のリスク管理など内部の管理畑をずっとやってきて、外部との接点がほぼない部門にいた。
銀行の頭取や銀行持ち株会社の社長になる人は、企画畑や人事畑、でなければ法人取引に携わっていた人が多い。木原さんのように内部の管理畑ばかりという人は珍しい」
実は、正裕氏の実弟は岸田文雄・首相の「懐刀」と呼ばれ、政界で注目を集めている木原誠二・官房副長官(51)だ。
「岸田首相の総裁選公約から『新しい資本主義』という看板政策まで、誠二氏が中心になってまとめあげた。首相の最も信頼厚い側近政治家として官邸を仕切っている」(岸田派議員)と言われる人物である。
いま政界と経済界で同じタイミングで頭角を現わした木原兄弟は互いに危機乗り切りの手腕を問われている。