5月28・29日に佐賀県唐津市で「Karatsu Seaside Camp 2022」(KSC)という音楽フェスとキャンプを組み合わせたイベントが開催される。奥田民生やPuffy、SHISHAMO、真心ブラザーズ、氣志團らが出演予定だ。このKSC開催の立役者となったのが、消防士ながら「唐津で1万人ロックフェスをしたい!」と訴え続けた、市職員の山口剛さん(37)。消防士から音楽フェス運営へ、異例のキャリアを歩む山口さんに、KSC開催が実現するまでの道のりを聞いた。
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元々、消防士になる前からずっと「唐津で1万人のフェスをしたい!」という夢を持っていました。そして今回、KSCの開催を受けて、僕は市の消防本部から観光課に異動し、音楽フェスの実行に携わることになったのです。
発端は、2018年11月に「旧唐津発電所跡地でロックフェスを毎月開催したらこの街はどうなるか」という研究報告書を、唐津の峰達郎市長に提出したことです。峰市長は就任1年目に、若手職員の自由闊達な意見を市政に反映させたいとの想いから、40歳以下の市役所職員で構成する「未来づくり研究会」を設立しました。この研究会の一つのテーマとして、ロックフェスについて提案をしたのです。
その研究報告書では、1万人規模のフェスを毎月開催したらかなりの経済効果が見込める、といった内容を記しました。もちろん、僕は消防士で、経済の専門家ではありませんが、手探りながら必死で書き上げた報告書を市長に読んでもらいました。
とはいっても、ただ経済効果を狙った企画ではなく、「大好きな唐津がずっと続くためには」という視点からの提案でした。その根底にあったのは、「これまでの人生経験の中で、音楽を嫌いな人に出会ったことがない。だから、音楽を通じて唐津という街が賑わうはずだ」との思いです。
ただ、「市が主催するフェス」を実現させるために何が必要か、どうすればいいかを考えていくうえで、大きな3つの壁にぶち当たりました。
【1】市役所にフェス開催のノウハウがない。やったことがなく、やり方がわからない。
【2】チケットが売れ残った場合、赤字は税金で補填することになる。
【3】そもそも、エンタメ業界に知り合いがいない。パイプが皆無。
自分が言い出しっぺとはいっても、これはなんとも絶望的な状況です。しかし、音楽で街が賑わう景色は僕の頭の中でイメージできていました。だからこそ、1万人ロックフェスをどうにか開催できる方法はないかと、日々考え続けました。