親が残すのは「プラスの財産」ばかりではなく、借金など「マイナスの財産」が含まれる場合がある。だからこそ、すべての相続を放棄する「相続放棄」についても知っておくことが重要だ。
借金が極端に多いなど、特殊な状況でのみ選択肢になると思われがちだが、『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』の著者で司法書士の椎葉基史氏によれば、相続放棄の相談は年々増えているという。
「司法統計によると近年は年間約23万件もの相続放棄が実施されています。平成元年(1989年)は約4万件だったので、30年ちょっとで5倍以上に増えている。年間約138万人と死亡者数も増えていますが、相続放棄の件数が増えるペースのほうが格段に速い」
それだけ「マイナスの財産」を残す人が増えているということだろう。
「さらに問題なのは、相続放棄さえできずに大きな負債を背負ってしまう人がいることです。そうした事態を避けるために、相続放棄について正しく理解して、備えることが大切です」(椎葉氏)
親が亡くなる前から「相続放棄が必要か」を考えておくことが重要となる。“要注意”のケースの特徴は別掲のチェックリストにまとめた。一般社団法人相続手続カウンセラー協会代表の米田貴虎氏が解説する。
「親に大きな額の借金があるかを聞いて正直に答えてくれればいいのですが、なかなかそうはいかないから難しい。たとえば、親が事業主として商売などをしている場合は、個人としての借入がある可能性が考えられるので注意を払うといった考え方をしていくことになる」