投資情報会社・フィスコが、株式市場の5月23日~5月27日の動きを振り返りつつ、5月30日~6月3日の相場見通しを解説する。
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先週の日経平均は週間で42.65円高(+0.16%)と続伸。終値では引き続き僅かに13週移動平均線を下回っている。日経平均は週を通じて方向感に欠ける展開となった。
堅調とされてきた米国経済の景気後退入り懸念がくすぶるなか、上値は重く、時間外取引のナスダック100先物の動きに振らされる展開が目立った。24日には写真・動画SNSサービスを提供する米スナップがマクロ経済の状況悪化を理由に業績予想を下方修正し、SNS関連株が時間外取引で急落したことが投資家心理を冷やす場面があった。また、26日には半導体大手の米エヌビディアが示した売上高見通しが市場予想を下回ったことが嫌気され、東京市場でも半導体関連株が売られた。
一方で、6月からの水際対策緩和による国内経済の回復や、景気対策による中国経済の底打ち期待、景気に配慮する姿勢を示唆し始めた米連邦準備制度理事会(FRB)などが相場の下支え要因となった。また、米エヌビディアは26日の米株市場で下落して始まったものの、結局切り返して大幅高となったことで、東京市場でも週末27日には半導体関連などハイテク株が大きく買い戻される展開となった。週間では日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>などの大手海運株が非常に強い動きを見せた。特に週末は、郵船は1対3の株式分割及び実質的な増配発表を受けて急伸。川崎汽船も株式分割への思惑が高まったほか、レーティング格上げもあり、上値を伸ばし、海運大手3社の中で唯一年初来高値を更新した。
今週の日経平均は下値を固める展開か。今週は重要な経済指標が目白押しなため、模様眺めムードが支配的となりそうだが、リバウンド機運が高まる前の底値固めの局面と考えたい。
米中二大国で経済指標の下振れが相次ぐなか、景気後退入りの懸念が一段と強まっている。しかし、少しずつだが明るい兆しも見られつつある。20日にはタカ派で有名なセントルイス連銀のブラード総裁が、条件付きはとはいえ、2023年以降からの再緩和の可能性に言及。また、23日にはアトランタ連銀のボスティック総裁が9月に利上げをいったん停止する可能性を示唆するなど、これまでタカ派一辺倒だったFRB高官に、スタンスの変化が見られつつある。
こうした中、市場では利上げの過度な織り込みが後退しつつあり、景気後退懸念も相まってのことだが、米10年債利回りは先週2.7%台まで低下、5月6日の3.14%をピークとした低下基調が鮮明になっている。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も低下基調にある。インフレピークアウト感が漂うなか、10年債利回りから期待インフレ率を差し引いた実質金利も上昇が一服して安定してきており、高い変動率が続いていた株式市場の落ち着きに寄与し始めているとみられる。