急ピッチで進む円安・ドル高の勢いを抑えるため、政府・日銀が「円買い・ドル売り」の為替介入を行う可能性も指摘され始めた。では今、為替介入を行えば、円安を食い止めることができるのか。また為替介入をするうえで、どのようなハードルがあるのか。FX(外国為替証拠金取引)などのカリスマ主婦トレーダーとして知られる池辺雪子さんが考察する。
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急速な円安進行を受けて、政府・日銀は6月10日の国際金融資本市場に関する情報交換会合後の声明文で、「必要な場合には適切な対応を取る」と、為替介入の可能性も示唆しています。23日には、元財務官でみずほリサーチ&テクノロジーズの中尾武彦理事長が、海外メディアに対して“個人的な見解”として「為替介入の可能性は排除できない」と語るなど、為替介入への注目度が高まっています。
とはいえ、為替介入を実施したところで、円安抑制に効果が出るかは不透明です。そもそも為替介入は日米合意のもとに行ってこそ効果があるもので、米国は今の為替相場を容認している様子です。もし日本だけの「単独介入」の場合、効果はほとんど期待できないと思います。
そもそも介入を行うにしても、介入に必要な資金はどう用意するのでしょうか。円買い・ドル売り介入を行うには「外貨を売る」必要があり、そのためには外貨の貯蓄が相応に用意されていなければなりません。為替介入の原資となる外貨準備高は、今年の5月末時点で約1.32兆ドルです。その内、1兆ドル以上は有価証券で保有しており、多くは米国債が占めています。
「それなら米国債を売ってしまえばいい」と考える人もいるかもしれませんが、事はそう簡単にはいきません。もし日本が保有する米国債を売却するとなると、米国債市場に激震が走ります。大量の米国債売りが発生すれば、米国債金利は大きく上昇することになり、そうなると日米金利差はさらに拡大して、ドル円を押し上げる要因になってしまいます。
ドル円の上昇を止めるための円買い介入で、その資金を作るためにドル円の上昇材料を作ってしまうという、本末転倒な事態になりかねません。そうしたことから、日本が米国債を売却することはないでしょう。
となると、介入できる資金は限られてくるので、仮に介入したとしてもマーケットから介入資金の少なさを見透かされてしまい、中長期的にドル円の上昇を抑えることはできないのではないでしょうか。
現状のドル円相場の値動きから察するに、FX投資家の中にはドル円をショート(ドル売りエントリー)している人もいるのではないでしょうか。そうした状況では価格が下がったところでショートの買い戻しが出てくるため、なかなか下落しにくい地合いとなる傾向があります。この状態は、当分続く可能性も考えられるでしょう。
私は押し目が形成されればサインを待ってトレードするだけなので、心理的にも余裕を持ちながら取引しています。トレードに必死になり過ぎても疲れてしまいます。個人投資家は仕事や家族を大切にしながら、その中で資産形成のために落ち着いてトレードをする方が賢明でしょう。
【PROFILE】池辺雪子(いけべ・ゆきこ):東京都在住の主婦。若い頃から株や商品先物投資を学び、2000年からFX投資を始め、これまでに8億円以上の利益をあげている敏腕トレーダー。2007年春、脱税の容疑で起訴、同年夏、執行猶予刑が確定。その結果、所得税、延滞税、重加算税、住民税、罰金(約5億円)を全て即金で支払う。2010年9月に執行猶予が満了。現在は自らの経験をもとに投資、納税に関するセミナー、執筆活動を行っている。トルコリラ/円、ドル/円、他通貨、日経平均株価などの値動きに関する詳細な分析を展開する「池辺雪子公式メルマガ」も発信中(http://yukikov.jp/)