電子チケットの普及や完全キャッシュレス化の進行で何が変わるのか──。7月頭に発生したKDDIの大規模通信障害では、「au」「UQ mobile」「povo」などKDDIが提供するモバイル通信を使っているユーザーに大きな影響を与えた。単純に通話やデータ通信が使えなくなっただけに留まらず、さまざまなシーンで不都合が生じた。たとえばコンサートでの“電子チケット”にも影響があった。
コンサートやスポーツ観戦での“電子チケット”では、スマートフォンでチケットを表示する必要があり、そのためにはデータ通信が必須となる。通信障害が起きているとデータ通信が行えないため、予めWi-Fi環境でチケットを表示させておく必要が出てくるのだ。エンタメ事情に詳しいライターの大塚ナギサ氏はこう話す。
「通常の電子チケットは、基本的にスクリーンショットは非対応で、入場時に改めて電子チケットを表示させておくのですが、今回のKDDIの通信障害発生時には、特例としてスクリーンショットでの対応を許可したケースもありました」
チケットの不正売買やペーパーレスによる環境負担の軽減など、多くのメリットがある電子チケットだが、通信障害という大敵の存在が明らかになった今回の騒動。ユーザーの間でも、電子チケットの是非についてはいまなお議論がある。
長年にわたって男性アイドルグループのコンサートに通っているというAさん(40代女性/主婦)は、電子チケット反対派だ。
「これまでずっと、行ったコンサートの紙チケットを思い出として全部保管しているんです。でも、電子チケットになったら、チケットをモノとして保管できない。これは寂しいです。一応電子チケットもスクリーンショットをして画像として保存していますが、チケットコレクションに入れて眺めることができないのは残念です」(Aさん)
スマートフォンを使い慣れていないという人もいる。スポーツ観戦が趣味だというBさん(50代男性/メーカー勤務)は、こう嘆く。
「1年前にガラケーからスマホに変えたばかりなんですが、スマホはショートメールと通常の通話しか使っていません。ネットを見るのはもっぱらパソコンなんです。
電子チケットとなると、まずどうやってチケットを取っていいかよくわからないし、操作も難しい。以前一度だけ電子チケットを使ったことがあるんですが、そのときも全部妻に操作をしてもらったし、入場時も係員の人に全部教えてもらって、チケットを表示させました。あまりにも面倒だったし、時間もかかってしまい、ウンザリしてしまいました。周囲にも迷惑をかけるので、基本的に電子チケットのみ対応のイベントは避けています」(Bさん)