マンションやアパートなどの不動産経営をする際は、安定した住生活環境を提供することが求められる。もしも住人の勝手な行動で、住環境に悪影響があった場合、法的な問題はどうなるのだろうか。実際の相談に答える形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
親が経営するアパートの住人のことで相談です。その人は引っ越してきたときから数年にわたり、アパートの横にある汚水マンホールへ勝手に洗濯の排水を流していました。厳密にいうとマンホールの横にある小さな穴に流していたのですが、先日、汚水槽から水があふれて発覚。その住人を問い詰めましたが、謝罪もありません。住人を訴えたら罰してもらうことはできますか。(京都府・39才・会社員)
【回答】
その住人の行動が理解できません。下水道の利用は無料ではありませんが、通常、下水道の使用料は水道料金に含まれています。条例で定められている水質基準に違反する汚水は流せませんが、洗濯の排水ではそのようなことはあまり考えられません。洗濯排水を直接マンホールに流しても、すでに水道料金を支払っていれば、下水道料金は支払い済みですから何の得にもなりません。
仮に井戸水を使っていて上水道を使用していない場合には、下水道料金の踏み倒しになります。不正な手段によって料金の徴収を免れたものとして条例で過料の制裁を受けます。ご相談の住人の例が、これに該当するのであれば、お住まいの市町村の役場に情報提供されればよいでしょう。このような特別な場合でなければ、一体何のためにわざわざ洗濯排水をマンホールに流すのか、ご質問からは住人の行動の目的がよくわかりません。
公共下水道が整備された地域では、建物所有者は下水を公共下水道に流入させるために必要な排水施設を設置して接続することが義務づけられています。使用にあたっては、届け出が必要です。
アパートも所定の排水設備が指定業者によって設置されて、公共下水道に接続されているはずです。住人が勝手にマンホールに流すことはできません。