コロナ禍の飲食店への影響は大きく、倒産するケースも少なくない。もし自営業の飲食店が破産したら、その経営者も自己破産するしかないのだろうか──。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
うちは夫婦で飲食店を営んでいますが、コロナ禍の影響で苦しい状況が続いています。銀行などから融資を受けてなんとかやってきましたが、客足は回復の兆しもなく、このままでは返済できそうにありません。店は法人になっているので、破産したら主人も自己破産するしかないのでしょうか。その場合、数年後にまた店を開くことはできないのでしょうか。自己破産すると今後、銀行から融資が受けられないなどのデメリットはありますか。(45才女性・自営業)
【回答】
破産になると、貸金業法の定める指定信用情報機関に信用情報として登録されます。登録期間は5年間です。少なくともこの間はブラックリストに名前が載るので、新たな銀行融資は困難でしょう。
しかし、法人になっているお店が破産しても、保証している経営者が破産を免れ、再生の道を探れる方法がないわけではありません。
中小企業ではたいてい、経営者個人が銀行融資の保証人になっています。そのため、会社が破産すると経営者である個人も破産せざるを得なくなり、その不利益を恐れて、経営者が思い切った事業展開や適時の転廃業ができずにずるずるとジリ貧になり、結局すべてを失う事態が頻発して問題になっています。
そこで、金融業界の自主的な決まりとして「経営者保証に関するガイドライン」が策定されています。
融資を受けた主債務者である会社が破産等の法的整理や中小企業活性化協議会による再生支援手続き等を取る場合に、その保証人が破産手続きによることなく、このガイドラインに基づく保証債務整理の申し出を、保証を約束した銀行(対象債権者)などに申し出る手続きです。
誠実な保証人が、対象債権者が適格と認める専門家の支援を受けて資産負債の内容を表明し、弁済計画を提示して対象債権者全員の同意を得られれば、弁済計画に従って保証債務が整理されることになります。