“10年に一度の寒波襲来”と連日報道されており、各地で降雪被害が出ている。その最中、「雪中氷上テスト」を行っていた自動車ライターの佐藤篤司氏。取材車両のタイヤとして選択したのが、「さまざまな冬道に使え、しっかり止まって、そして曲がる」と、雪国のユーザーの間で多くの支持を集めるブリヂストンのスタッドレスタイヤ、「ブリザック」だ。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回はブリザックの最新モデルである「VRX3」を使用した感想をレポートする。
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年々向上するスタッドレスタイヤの性能
英語で大吹雪を意味する「Blizzard」と、のこぎりなどのギザギザとした歯を意味するドイツ語「Zacke」を組み合わせて名付けられた「ブリザック」が登場したのは1988年でした。スタッドレス、つまり「スタッド(スパイク・鋲)のない冬用タイヤ」として開発されたのですが、正直に言えば、出たばかりの頃は、雪道はなんとかなりましたが凍結路ではあまり頼りにならず、雪国のユーザーからはスパイクタイヤの代わりにはならない、と言われていました。
スノータイヤのトレッド面(タイヤが路面と接触する部分)に、スパイクがびっしりと打ち込まれた「スパイクタイヤ」はやはり踏み固められた圧雪路や凍結路では安心感がありました。ところがスタッドレスタイヤには凍結路面をひっかくための爪のような役割のスタッドがないため、駆動や制動、そしてカーブで「どこまで信用していいのか」と、不安な気持ちがあったのも仕方がありません。
では、なぜスタッドレスが続々と登場したのでしょうか。そこには積雪寒冷地の冬用タイヤの主流であったスパイクタイヤが抱える公害問題があったのです。
雪道や凍結路ではあまり問題にならなかったのですが、いざ路面が乾いてアスファルトが顔を出すと、タイヤに打ち込んだピンが直接アスファルトを削るため、路面も傷み補修費用が多くかかります。それ以上に深刻だったのは、粉塵公害が発生したことでした。当時、宮城県仙台市では、スパイクタイヤによる粉塵が街中に舞う「仙台砂漠」といわれるような社会問題が発生し、多くの人たちが外出時にマスクが手放せないほどでした。
雪国では3月いっぱい降雪の可能性があり、途中に路面から雪が消えたとしても、スパイクタイヤを装着し続けなければいけません。こうした環境問題に対処するため「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が1990年に公布、禁止規定も1991年4月1日に施行されました。
当然のように国内のタイヤメーカーはブリザックなどのスタッドレスタイヤをいち早く投入し、1990年にはスパイクタイヤの製造を中止し、1991年3月をもってスパイクタイヤの販売も中止しています。冬用のタイヤについての安全と環境問題は両立しないことを理解した上で、最優先課題となったのが、より安全性の高いスタッドレスタイヤの開発です。