藤川里絵「さあ、投資を始めよう!」

損切りできずにいつも塩漬け… 投資家“あるある”の失敗に潜む「非合理的な判断」の正体

株式投資でやってしまいがちな失敗には、どのような原因があるのか(イメージ)

株式投資でやってしまいがちな失敗には、どのような原因があるのか(イメージ)

 投資を行っていると、売買判断を誤って利益の機会を逃したり、損失を拡大させてしまったりする経験は誰にでもあるはずだ。なぜ、そういった行動をしてしまうのか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第31回は、「投資における“こころの罠”」について。

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 株式投資をする上で、失敗を繰り返してしまういちばんの理由は「こころの罠」にあります。ほんとは早く売ったほうがいいのに、売れずに損失を広げてしまったり、今買わないと損をする!と思い込んで買ってしまい、そこが株価の天井だったり。

 じつは、こうしたおかしな投資行動は、自分だけの失敗ではなく、多くの投資家が経験する“あるある”の失敗なのです。いったいなぜそういった誤った行動を起こしてしまうのでしょうか。

行動経済学が明かす“こころの罠”

 人は、かならずしも合理的な行動をするわけではありません。たとえば当たる確率が非常に低い宝くじを、並んでまで買うのは、けっして合理的とは言えません。それでも、なんとなく当たる気がするという根拠のない感情で、多くの人が発売日に行列をなします。

 こうした非合理的な判断をしてしまう決定過程に焦点を当てた、経済学と心理学を融合した学問が「行動経済学」です。少し昔になりますが、2002年にダニエル・カーネマン氏が行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したことで注目され、その後2017年にリチャード・セイラー氏が同じく経済学賞を受賞し、さらに認知度が高まりました。

 わたしたちが投資をする上で、ついつい起こしがちな失敗の多くは、この行動経済学によって解明されています。

損切りが遅れ、利益確定は早くなる――プロスペクト理論

 損切りができない、少しの利益が出るとすぐ売ってしまう──。“損大利小”という、投資ではもっとも遠ざけたい結果となってしまうのは、プロスペクト理論の中心をなす「損失回避性」という考え方で説明できます。

 人には過度に損失を回避する傾向があるため、損を確定する行為の“損切り”はせず、また、利益が出ると、その利益を失いたくないためにすぐ確定してしまいます。

 不思議なことに、わたしたちは、10万円を得る喜びを「1」だとすると、10万円を失う悲しみは「2」に感じるそうです。同じ10万円なのに不思議ですよね。

 わたしたちには「とにかく損をしたくない!」という性質があるということです。そのため、損失確定をなるべく後回しにしたり、下がっている株をさらに追加で買い増し(「ナンピン買い」と言います)、平均取得コストを下げ、なんとか損を逃れたいという行動を取ります。それが、ますます損失を広げる結果となるのです。

 投資で資産を増やすためには、“損小利大”でなければいけません。しかし、人は自然と、その逆の行動を取ってしまうというわけです。

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