「一人暮らしの女性です」とアピールしているようなもの
女性の一人暮らしの場合、挨拶しない理由が変わってくるようだ。IT企業に勤務する20代女性・Bさんは、大学進学を機に上京した際も、就職で引っ越した時も、挨拶はしなかった。「最初の一人暮らしの時に、不動産屋から止められたので」と振り返る。
「実家が引っ越した時は、親が隣近所の人たちにタオルか洗剤、もしくは菓子折りを持っていく姿を見ていたので、引っ越しの時はそうするものだと思っていました。
でも、部屋を決めた後、不動産のスタッフに挨拶について相談したら、『しなくていい』と止められました。そのスタッフによれば、『一人暮らしの女性です、とアピールしているようなもの』だと。親は“もしもの時のお隣さん”だから、挨拶しておいたほうがいいと言っていましたが、確かに防犯面を考えると、そもそも隣にどんな人が住んでいるかわからない状態での挨拶って、割とリスクかもしれないな、と思いました。それ以来、挨拶はしないことにしています」(Bさん)
出版社勤務の30代女性・Cさんも、一人暮らしでの挨拶をしたことはない。「生活時間の多様化」を指摘する。
「20代の頃、最初の一人暮らしの時は、タオルを用意しました。きれいにラッピングもしてもらったのですが、引っ越し当日、翌日、翌々日とお隣さんのインターホンを鳴らしても応答がない。週末ならいるかなと思っても、不在でした。挨拶するタイミングを逃したまま日にちが経ってしまって、結局そのタオルは普通に自分で使いました。
そもそも、私も働いているから、帰りが21時とかになる。それから訪問するのは時間が遅い気がしてしまうし、土日といっても、みんなが土日休みじゃないかもしれませんし……。一人暮らしの人が多い物件だと、すれ違いも多いのかもしれないと思います」(Cさん)
そんなCさんは、「そもそも、誰か知らない人からのコンタクトは怖いですよね」と語る。
「別の物件では、隣に越してきた人から書面で挨拶をされたことがありました。『○○号室に引っ越してきた△△です。よろしくお願いします』というような手書きのメッセージと、小さな菓子折りがドアにぶら下がっていました。もちろん良かれと思ってのことだとは思うのですが、やっぱり少し怖かったですね。お菓子は申し訳ないのですが、捨てました。何が入っているかわからないですから……」(Cさん)