高齢化が進むなかで、認知症に対する不安を抱いている人は少なくないだろう。厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況(2019年)」によると、要介護や要支援に認定されている人の17.6%が認知症によるものとされている。
現実問題として、認知症になった配偶者の銀行預金を引き出せなくなり、生活が苦しくなってしまう人もいる。そうならないためには、どのように対処すればよいのか、以下、解説していこう。
「勝手に引き出す」のはNG
銀行預金は、名義人の意思が確認できなければ、原則として引き出せない。だが、生活資金や入院費などの用途によっては対応してくれる場合があるので、そのような状況においては金融機関に確認したい。
名義人が認知症である事実を隠したまま、他人が預金を引き出していると、窃盗罪や横領罪に問われてしまう可能性がある。認知症の名義人から告訴されるケースは少ないといえるが、相続発生時に他の相続人とのトラブルの原因となる可能性も考えられるので、預金を無断で引き出すことは避けたい。
認知症によって老後資金が引き出せなくなることを避けるために利用したい制度のひとつが、「成年後見制度」だ。成年後見制度とは、判断能力が十分でない人を保護するために、契約や手続きの支援をする制度である。「成年後見人」を選出することで、認知症になった人の代わりに銀行預金を引き出したり、不動産を管理したりすることが可能だ。
ただし、成年後見人は原則として、居住用不動産の処分や生命保険の解約といった、被後見人(認知症になった人)に不利益を及ぼす可能性がある行為はできない。