保険とは「起きる可能性は低いが、いざ起きたら、大きな損失があるトラブル」に備えるものだ。だが、保険会社の巧妙なセールストークに惑わされて、本来、必要のないはずの保険にまで加入している人は少なくない。
都内の大手生命保険会社で外交員として働いていたA子さんは「“これはお得”と言い切る外交員は信じてはいけない」と明かす。
「基本的に、お客さまにうそをつく外交員はいません。でも“○○さまにぴったりの商品があるんですよ”と、あたかもその人のためだけに選んだかのように、会社から売るように言われている商品をすすめたり“これは大人気の商品なんです”と、特別感を演出したり……成績を上げるために“うそではないけれど、真実でもない”セールストークをしていました」
保険は一生涯保障される「貯蓄型」と、一定期間を保障する「掛け捨て型」に分かれる。だがそれも、顧客に合ったものをすすめているとは限らない。なぜなら掛け捨て型は、保険会社にとっての“ドル箱”だからだ。
「がんにならない限り保険金がおりないがん保険をはじめ、掛け捨て型は、保障期間を過ぎれば会社は加入者に1円も払わずに済むので、貯蓄型よりも会社の利益になりやすいんです。私も、掛け捨て型をおすすめするよう、会社から言われました」(A子さん)
うそはついていないが肝心の言葉が抜けている?
一方の貯蓄型は「保険料が積み立てられていき、損することはない」というイメージがあるが、そうとも限らない。昭和の頃とは違い、超低金利のいまでは、元本割れするケースも少なくないのだ。元本割れする商品を「損はしません」とうそをついて売られることはないが、巧妙に真実を隠す外交員もいる。生命保険会社での勤務経験を持つファイナンシャルプランナーの横川由理さんが語る。
「“掛け捨て型と貯蓄型、どちらがお好みですか?”と聞かれると、貯蓄が好きな日本人は貯蓄型を選んでしまうものです。銀行の窓口でも“資産額が毎日変わって一喜一憂する商品と、着実に資産が積み上がっていく商品、どちらがいいですか?”と選ばせます。前者は投資信託で、後者は外貨建て保険ですが、多くの人が、後者を選びたくなるでしょう。
この説明は決してうそではありませんが“ドル建てで”という、肝心の言葉が抜けている。外貨建て保険には為替リスクもあるうえ、手数料も6%と非常に高いものも多い。しかも、手数料について追及すると“でも、解約するときの手数料は10%もするんです”と、話をすり替えられるのです」