新年度を迎え地域コミュニティの活動が活発化するなか、全国各地の自治会(町内会)の運営が曲がり角に立たされている。地域住民の脱会が増加、加入率の低下に歯止めがかからず、多くの自治会が頭を抱えているのだ。こうした現象が起きる背景には、地域住民が自治会側のルール設定や運用に疑問を抱くケースが少なくないということも一因にありそうだ。
「自治会非加入を理由にしたゴミ捨て場の利用禁止は違法」──。昨年10月、大阪高裁でこんな判決が下された。神戸市の住宅街に住む夫妻が起こした訴訟で、司法は1審(神戸地裁)に続き自治会側の違法性を認めた。
この自治会では、住民に年会費3600円の負担と掃除当番の協力を求めるなどし、応じない住民のゴミ捨て場利用を禁止するルールを設けていた。今後、最高裁で争われることになるが、同様のケースで自治会と住民に軋轢が生じるケースは少なくないという。
東北地方のある都市に住む男性(43)が言う。
「わが家も似たような問題に直面しました。うちは町会費を払っていますが、夫婦ともに不規則な仕事をしているので、集積所の定期清掃はお断わりしてきました。すると町会役員から『このままだと、今後のゴミ処理は自分の責任でお願いすることになる』と圧力をかけられた。市役所に相談するも『個別のゴミ収集はできない。町会と折り合いをつけるか、ご自身でゴミ処理場までお持ちいただくしかない』と言われてしまい……」
男性は町会長に直談判。他の町会活動に積極参加する条件で話は成立したが、釈然としない様子だ。5年前、愛知県から石川県の新興住宅街に転居した女性(36)もこう打ち明ける。
「ご近所さんも転居組の若いご家族が多く、当初は土地に溶け込もうとみんなで町会に加入していました。ところが『できる範囲で構わない』という約束は反故にされ、土日となれば各種行事や会合に呼び出される。輪番制の町会費集金など雑務もしんどいので、同じエリアの住民と相談して町会を抜けることに。すると『町会員を辞めるなら、お宅らの一角に設置した防犯カメラや防犯灯は運用停止しますね』と言われました。まるで脅迫ですよ」
こうした事例はレアケースかもしれないが、“自治会離れ”が各地で見られるという現実があり、朝日新聞が一面で〈自治会活動、曲がり角 加入率低下、役員高齢化 解散も〉(4月9日付)と報じるなど注目を集めている。