大規模マンションが集団で町会を脱会
だが、自治会側にも運営に非協力的な住民に対しての言い分はある。東京23区内で10数年にわたり自治会長を務める男性(72)が語る。
「ライフスタイルや意識の変化により、町会活動を『うっとうしい』と感じるのは理解できる。ただ、活動にはいっさい協力しないが権利は主張する、というスタンスはいかがなものか」
この町会では、お祭りや地域の運動会、防災訓練、防犯パトロールなど、行政だけではフォローできない活動をサポートしており、「地域住民の理解と協力なしで活動の継続は不可能」と訴える。
「町会活動には人員と資金が必要。よく『町会費の使途が不明』『(町会)役員の飲み代に消えている』などと言われるが、町会報に記載された決算報告などを見れば使途は明らか。基本的には町会役員が手弁当で活動している」(同前)
古くから地域で暮らす住民には一定の理解を得ているものの、新たに居を構える人たちへの理解を求めるのは容易ではないと、この自治会長は続ける。
「10数年前に建った100戸を超える分譲マンションでは一昨年、新たに理事長になった弁護士が町会参加に異を唱え、集団で町会を脱退する事態になりました。もちろん個人での加入はできますが、あえて町会に参加する人は少ない。この事例は周辺にも伝わり、マンション1棟単位での町会脱会が相次ぎました」
そもそも自治会は任意団体であり、住民が加入を強制されるものではない。あくまで行政の補助を担う「ボランティア」活動で、運営は住民から集めた自治会費と行政からの補助金で賄われている。慢性的な予算、人手不足に悩む行政活動を「地域のみんなでサポートしましょう」というのが本来の趣旨だ。
町会に参加しない道を選ぶ地域住民が増えているのも悩ましい問題だが、自治会にとっては「モンスター化する町会員」も厄介なのだという。
「活動には参加しないが、町会費は払うという人が、意外と厄介なんです。会費を払っているのだからと、『迷子になった愛犬を防犯パトロール時に探してほしい』『台風で雨漏りしたから屋根の様子を見てほしい』などと、町会を“便利屋”のように使う人が増えてきました」(同前)
遠い親戚より近くの他人──との言葉もある。互いに先入観を捨て、同じコミュニティに住む人として、「適度な付き合い方」を模索する時期に来ているのかもしれない。(了)