田代尚機のチャイナ・リサーチ

世界的「スマホ不況」が止まらない 市場の成熟に加え技術革新も頭打ち、半導体産業は窮地に

インドの携帯電話普及率も81.99%に(ムンバイのスマホショップ。Getty Images)

インドの携帯電話普及率も81.99%に(ムンバイのスマホショップ。Getty Images)

半導体メーカーにとって政治環境も厳しい

 スマホは半導体需要の大きな製品の一つである。足元では巣ごもり消費の終焉とともに、パソコン、タブレットの売れ行きが落ちており、かつ、いずれの市場も成熟している。電気自動車の普及による半導体需要の増加といったポジティブな要因があるにしても、付加価値の面からはその貢献度はそれなりである。

 IoT(モノのインターネット)、AR/VR(拡張現実・仮想現実)、メタバース、ChatGPTに代表される革新的なAIGC(AI Generated Content=人工知能を使って自動生成されたコンテンツ)などの普及が急速に進めば半導体需要は再び高成長を取り戻せそうだが、そうなるにはまだ数年の歳月が必要だろう。

 半導体メーカーにとって政治環境は厳しい。米国はCHIPSプラス法案の実施により、保護主義政策を採り始めている。あまり注目されていないようだが、EUも域内で半導体の研究開発から生産までの一貫したシステムを作ることを目的とした欧州半導体法案が4月18日、暫定的な政治合意に達している。

 巨大な需要を背景に持つ中国企業は自国内で売り上げを伸ばす努力をすればよいが、米国にも欧州にも属さない国の半導体メーカーにとっては厳しい。とりわけ、サムソン電子、韓国経済の停滞は長引きそうだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。楽天証券で「招財進宝!巨大市場をつかめ!今月の中国株5選」を連載するほか、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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