中国は米国と違い、財政面での自由度が高く、財政政策による投資への波及効果も大きい。加えて、インフレが発生していないことから、金融政策を緩和する余地は大きい。今後の見通しを過度に悲観する必要はないのかもしれない。
それでも心配なのは不動産の回復が遅れ、今後も充分戻らないかもしれない点である。2020年夏以降に強化された不動産デベロッパーに対するレバレッジ縮小を求める政策の影響が強く、昨年5月以降、市場回復に向けて数々の政策が打ち出されているが、その効果は十分ではない。既に行われている不動産業者向けの融資金利、不動産ローン金利などの引き下げ、不動産購入における制約条件の緩和などをさらに進め、賃貸向け住宅建設を加速させるなどの政策を打ち出しているが、そうした政策だけで不動産需要が回復するかどうか。
不動産需要自体に構造的な変化があるかもしれない。共産党は「不動産は住むためのものであって投資対象ではない」と繰り返し指摘するが、居住用住宅においてさえも、購入動機の一部は将来の値上がり期待である。岩盤のように固い消費者の値上がり期待が本当に萎んでしまえば、不動産価格はしばらく下がり続け、不動産投資、消費は停滞することになる。
今後の中国経済を予想する上で、“不動産”の浮沈が重要なカギとなりそうだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。楽天証券で「招財進宝!巨大市場をつかめ!今月の中国株5選」を連載するほか、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。