個別株投資を行う際に、企業の業績を確認することは多くの投資家が行っているだろう。では、業績の中で特にどの部分を注意して見るのがよいのか。新刊『株式投資2年生の教科書』が話題の、株式会社RES代表取締役・児玉一希氏が、「企業業績を見る時の8つのポイント」について、具体的に解説する。
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これから、銘柄を選ぶ上で外せない企業業績について解説していきます。企業の分析には無数の指標があり、継続して勉強していく必要はありますが、初心者の方でも最低限これは押さえてほしいと思う指標について厳選してまとめました。
【1】売上高
売上高とは、企業が商品やサービスを販売することで稼いだ合計金額のことです。営業活動から発生し、損益計算書では一番上に表示されます。その数字が大きければ大きいほど業績が成長していると判断されますし、当然ですが企業は売上を立てないと存続できません。売上はそこで働く従業員の給料や新たなサービスへの設備投資、株主への配当、最終利益へと繋がるので、その大きさが企業の成長にダイレクトに繋がります。
ですから、よく「利益率」で企業の優秀さを測る人がいますが(否定はしませんが)、絶対値としての売上・利益金額がまず大きくなる必要があります。十分な売上がなく利益率ばかり高いと、企業が長期にわたって成長する上での基盤がしっかり形成されていないことだってあるからです。
また、新興の伸び盛りの企業ほど売上成長率も高い傾向にあり、それと比べてしまうとインフラ企業のような成熟産業は、そこまでの急成長はめったに起きません。とはいえ業種問わず、売上高は伸びていたほうが望ましいです。
【2】海外売上
日本企業であれば、特にこの「海外売上」が長期的な発展を考える上で非常に重要です。多くの方がご存知の通り、日本は人口が減少し経済規模が縮小する運命にあります。これまで単一の島国で1億3000万人のマーケットがあったから経済大国でいられたものの、これから先、そうは行きません。小さくなるパイの中での奪い合いは消耗戦です。
しかし、ひとたび世界に目を向ければ、逆に人口は増加傾向にあり持続的に経済が成長しています。また、日本は自動車や電気機械といった工業が産業の多くを占め、円安局面になると収益を伸ばしやすい構造にあります。ひと昔前なら加工貿易による輸出、現在では海外の現地法人が稼ぐ外貨が円安によって上乗せされるのです。
例えば、バイクのエンジンの世界的企業であるヤマハ発動機は、インドや東南アジアでの需要増加と、ここ10年の円安トレンドに乗って好業績を連発しています。釣具や自転車ブレーキを製造・販売するシマノも海外売上が90%で、欧州やアジアを中心に稼いでいます。世界の成長を取り込んでいく企業は業績を長く向上させられますし、海外売上がない企業は危機感を抱いたほうがよいレベルです。