せっかくマンションを購入したのに、隣人が“厄介な人”でトラブルが発生してしまった──。そんな状況に陥ってしまったらどうするか。なかにはマンションの売却を考える人もいるだろうが、“厄介な迷惑隣人”の存在を明かさずに売るのは問題ないのだろうか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
分譲マンションに住んでいますが、隣人は些細な音にも敏感で「テレビの音が聞こえる」「ドアの開け閉めの音がうるさい」などとよく怒鳴り込んできます。しかし、私は夫とのふたり暮らしで一般的な生活音以外に苦情を言われるようなことはしていません。隣人はほかの住人からも「かなり変わった人」と思われているようです。このままでは精神的に参ってしまうのでマンションを売りたいと思いますが、売るときに隣人の情報を言わずにいると罪になりますか(埼玉県・59才・アルバイト)。
【回答】
引っ越しを考えるとは、平穏な日常生活が無理になるほどの迷惑行為と感じておられるのだと思います。
その場合でも、売買契約は対等な立場で行うので、気になるなら買い主が自分で調査すればよいことであり、売り主は迷惑隣人の説明義務を当然には負いません。売買を仲介する宅建業者も、目的不動産について権利関係などの重要事項を説明する法律上の義務がありますが、異常な隣人の存在を調査までして説明する義務はありません。
とはいえ専門家ですから、買い主にとって不利益で、それがわかれば買わないかもしれない事情を知った場合には説明する義務があり、説明を怠ると説明義務違反になり、賠償責任が発生します。また、売り主が買い主から直接、例えば「近所に生活上の支障がないか」などと問われた際に迷惑隣人のことを隠すと、売り主自身も同様に説明義務違反になります。