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国民年金の納付率80%超えの背後で議論が進む「保険料100万円アップ」計画

制度がコロコロ変わりすぎ

 国民年金は日本に住む20歳以上60歳未満に加入義務があり、自営業者ら第1号被保険者は毎月の保険料を支払い、納付月数に応じた年金を65歳から受け取る仕組みだ。今年度の保険料は月額1万6520円。40年間保険料を支払った場合の満額の受給額は月額6万6250円(67歳以下)となっている。年間約20万円の保険料を支払い続けていると、将来的に年間約80万円の年金が受け取れるという仕組みだ。

「現在、その仕組みを大きく変える議論が進行中です。現状では40年間になっている国民年金の加入期間を20歳以上65歳未満の45年間へと延長するというものなのです。年金制度の5年に一度の『財政検証』が2024年に控えていますが、昨秋からの社会保障審議会年金部会での議論でも45年への延長案が俎上に載せられていますし、前回2019年の財政検証でも、オプション試算として納付期間が45年に延びた場合にどういった変化があるかが検討されています。

 見逃せないのは、加入期間が45年に延長されれば年間約20万円の保険料負担が5年分増えるということ。つまりこれは保険料負担が100万円も増えるという話なのです。夫婦2人であれば計200万円の負担増です。それに伴って年金額が少し増えると考えられますが、保険料の増額分を取り戻すのに10年はかかる計算になる。しかも、年金支給額の上昇を物価上昇の水準よりも抑えるマクロ経済スライド制度などもあるため、将来の給付水準は今よりももっと下がっている懸念もあります」(前出・ベテラン社会保険労務士)

 そもそも、年金制度がコロコロ変わりすぎだという批判が根強くある。「若い世代にとっては何十年先を見据えて保険料を払うという話なのに、保険料を取るだけ取っておいて、受給開始年齢の引き上げや給付水準の引き下げなど改悪を繰り返してきた。これでは公的年金をベースにした将来設計など困難極まりないという話になってしまう」(同前)のである。

 厚労省の発表資料では保険料納付率の上昇と保険料収納対策を並べ、成果があがっていることを示しているようだが、年金制度そのものの信頼を真に得るために、他にもやるべきことは多いのではないか。(了)

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