政府は国内で生産した半導体の売上高を2030年に現在の15兆円に引き上げるという計画を示している。そのための拠点整備に2年で約2兆円の予算を投じる方針だが、はたして計画通り進むのか。海外勢に大きく後れを取っている日本の半導体開発・製造の進むべき方向について、経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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「産業のコメ」と呼ばれる半導体の国内生産体制の整備・増強が進んでいる。
“国策プロジェクト”のラピダスは、北海道千歳市に工場を建設して2027年から回線幅2nm(ナノメートル)の次世代ロジック半導体の量産を目指し、2025年4月までに試作ラインを稼働させる。熊本県菊陽町で半導体工場を建設している台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は、同工場の周辺に第2工場を建設することを明らかにした。
ルネサスエレクトロニクスは、2014年に閉鎖した山梨県の甲府工場を2024年に再稼働させる方針だ。キオクシアは、三重県の四日市工場に新棟を建設して生産を開始している。
その背景には、新型コロナウイルス禍によるサプライチェーンの混乱やオンライン生活への移行、米中対立、ヨーロッパの脱炭素政策などによる世界的な半導体不足がある。
一方、半導体の世界の売上高に占める日本のシェアは、1981年は70%だったが、1986年の第1次日米半導体協定後は右肩下がりとなって1988年に50%、2019年には10%に落ち込み、以後も減少が続くと予測されていた。
このため経済産業省は2021年にまとめた「半導体・デジタル産業戦略」に基づき国の関与を開始した。
そして今年4月に公表した同戦略の改定案では、国内で生産した半導体の売上高を2030年に現在の3倍の15兆円に引き上げるという計画を示し、そのための拠点整備に2年で約2兆円の予算を投じる方針だ。
しかし「2030年に15兆円」の目標を達成するのは至難の業だろう。なぜなら、半導体産業政策で30年以上も眠っていた経産省に、今さらまともな舵取りができるとは思えないからだ。