日本の半導体産業はなぜ衰退したのか
ファンドによる資金供給は一般の補助金と異なり、資本市場を利用することで、全体の投資金額にレバレッジをかけることができる。国家の投資はあくまで“呼び水”であり、発行体の信用力を高めることで、より多くの投資家を引き付ける効果がある。
国家財政の面からみれば、支給したらそれで終わりとなる支出ではなく、投資先が成長すれば、投資資金を回収した上に巨額な利益を積み重ねることができ、それらの資金をまた別の企業へと再投資することができる。長期保有すれば継続的に配当を得ることができる。非常に効率の良いやり方といえるだろう。
翻ってバブル崩壊前の1980年代、日本の半導体産業は世界最大規模を誇ったものの、日米半導体協定による貿易規制、最低価格制度の導入などにより状況は一変、1990年代後半以降、台湾、韓国企業などに急速に市場を奪われてしまった。その衰退の過程で経産省は半導体メーカーを統合させ、そこに出資して上で再編させるような政策を行ったが、うまくはいかなかった。
中国では国家部門はあくまで投資家として行動するだけで、その立場を超えて経営に口出しすることはない。一つの企業を保護して大事に育てるというのではなく、できるだけ多くの企業にチャンスを与えた上で、互いに激しく競争させ、その過程を生き抜き、勝ち上がった強い企業だけに国家の発展をリードさせるようなやり方だ。社会主義体制でありながら、市場経済を非常にうまく活用している。
日本の半導体産業が衰退した要因としては、米国による規制の影響が大きかったとはいえ、それだけではない。得意先であった日本の家電メーカーが急速に衰退したこと、市場を重視しなかったり、技術者を大事にしなかったり、思い切った投資をタイムリーに行わなかったりなど、経営に問題があったことなども要因として指摘できよう。