レアメタル輸出規制が実施されると、どのような影響が考えられるのか──。中国商務部、海関総署は7月3日、国家の安全と利益を維持するために、ガリウム、ゲルマニウム関連製品について輸出管理規制を実施すると発表した。
これらのレアメタルは半導体、電子部品などに利用される重要な原材料だ。ガリウムは主に半導体の原材料となり、スマホやLED照明、太陽電池、レーダーなどに使われ、ゲルマニウムは光ファイバー通信、赤外線探知器、人工衛星などに使われる。いずれも半導体、電子部品の製造には無くてはならない、代替のきかない重要な金属製品だ。
ガリウム、ゲルマニウムは自然界において単体で存在することはない。ガリウムはアルミニウム、亜鉛精錬、ゲルマニウムは亜鉛精錬の過程で、副産物として産出される。それらの産出にあたっては、環境に対する負荷が大きいことや、市場規模がそれほど大きくないことから、参入メーカーは限られる。ブルームバーグが7月4日付の記事の中で、今年発表されたEUによる研究を引用する形で中国の生産シェアを示しているが、ガリウムでは94%、ゲルマニウムでは83%となっている。中国が圧倒的な供給力、市場支配力を有している。
中国外交部は7月5日、記者会見を通じて、今回の輸出管理規制は公正、合理的、敵視しないといった3原則に基づき、グローバルなサプライチェーンの安全、安定を維持した上で実施すると説明している。あくまで国内の法律に基づいた技術的な話であり、WTOの規定にも反していないと主張しているが、だからと言って日米欧への輸出が選択的に制限されないと言い切れるわけではない。
これらの金属製品は、半導体や電子部品の一部として日米欧の軍事製品にも使用される。米国が国家の安全と利益のために、中国に対して最先端の半導体製品、技術の輸出を禁止するのであれば、中国は自国の安全と利益のために、日米欧に対してこれらの金属製品の輸出を禁止しかねない。
この規制の実施開始日は8月1日である。日米欧政府が交渉のために残された時間はわずかである。