LINEは1対1で本人と紐づく
マーケティングアナリストで若者のトレンドに詳しい芝浦工業大学デザイン工学部教授の原田曜平氏が、若者のこうした行動原理を解説する。
「若い人はみんなLINEを使っているものと思いがちですが、現在3割弱の若者は利用していないというデータがあります。13~29歳の1428人を対象に私の研究チームが独自の調査をしたところ、2019年には81.0%が『LINEを使っている』と回答していたのが、2022年は73.9%に下落しました。その理由は、『LINE疲れ』だといいます。
LINEのアカウントは基本的に本人と1対1で紐付いているため、SNSとはいえ実生活と地続きのリアルで密なコミュニケーションを求められやすい。そうしたなかで、LINEグループで揉め事やいじめに巻き込まれたり、女子なら面倒な人に言い寄られたりといったトラブルを経験しているケースも少なくありません。そのため、『面倒くさい』と感じる若者が増え、本当は使っていても『LINEはやっていない』と答えるパターンも多いようです。
一方、インスタは複数のアカウントを持てるため、前述の調査では対象者が平均1.8個のアカウントを持っていることがわかりました。『本垢』を公開アカウントとし、『裏垢』は鍵をかけて親友との連絡にといった使い分けをしている。そして、繋がりたくない面倒な人に連絡先を聞かれたら、本垢を教えて適当に無視するなどしているというのです。SNSでのコミュニケーション疲れやトラブルを回避する自衛的な心理が働いているという側面があるのでしょう」
SNS全盛時代で、望んでもいない繋がりも求められるようになっている。物心がついた時からSNSが当たり前の存在だった世代はそうしたリスクに敏感になり、より匿名性の高いSNSを求めているのかもしれない。(了)