田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本の自動車保険市場はまだ健全? 中国で多発する自動車保険の不正請求の手口

修理工場が故意に顧客の車に傷をつけ高額の保険料を請求するケースもあるという(Getty Images)

修理工場が故意に顧客の車に傷をつけ高額の保険料を請求するケースもあるという(Getty Images)

「日本人の職人気質は失われてしまった」

 中国の自動車販売台数は世界最大規模であり現在も、成長が続いている。日本の損害保険会社にとって中国の自動車保険市場は何としても攻略したい市場であり、中国側も市場開放を進めており、外資の参入に積極的になってきた。実際、日本の大手各社は中国に現地法人を設立しているが、販売面での競争力の弱さに加え、この厳しい市場への対応の難しさによって、事業展開が妨げられている。

 ある中国の法律事務所(華律)のホームページによれば、中国の詐欺による賠償金額は全体の賠償額の2割以上であり、特定の地域、あるいは特定の保険会社に限ればその比率は3割を超えているそうだ。その分、保険会社は保険料率を高く設定せざるを得ない。こうした中国の現状と比べれば、日本の自動車保険市場はまだ健全な方なのかもしれない。

 中国ネット情報の中で、もう一つ気になったのは、日本の企業やサービスの劣化を指摘する声である。

 日本企業、日本製品、日本のサービスに対する中国人の評価は依然として高い。中国とは違うといった評価である。しかし、今回のビッグモーターの様々な不正行為は、そうした日本に対する高評価を貶めるものになっている。“頑固で融通が利かないところがあるかもしれないが一方で、誠実で責任感が強いといった日本人の職人気質は失われてしまった”といった趣旨の書き込みも目立つ。

 日本企業に関する過去の不祥事、たとえば三菱電機による製品検査データの改ざん、日野自動車による燃費性能データの改ざん、経営再建中の曙ブレーキ工業による検査データ改ざんなどの例を挙げ、日本の製造業の劣化を指摘している。

 日本のこれ以上の地盤沈下、衰退を食い止めるには、日本企業は自己を見失うことなく、もう一度自分たちの良さを見つめ直し、失われてしまった美点を取り戻してもらいたいところだ。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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