このまま中国で不動産危機が顕在化していくのか──。恒大集団は17日、ニューヨークの連邦破産裁判所に対して破産法15条の適用を申請した。同集団の資金調達は複雑で多様化しており、ドル建ての起債も多い。同社は現在、当局の協力を得ながら生き残りをかけた企業リストラを実施しているが、当局の思惑通りには処理できない海外債務の存在が作業を進める上での大きな障害となっている。
申請が通り、破産法15条が適用されることになれば、米国がらみのドル建て資産は保全されることになる。企業リストラを進める上での障害の一つがとりあえず取り除かれる。倒産しないための措置ではあるが、とはいえ、現状の経営、財務状況は厳しい。
収益面をみると、過去最高売上高は2020年12月期の5072億48000万元(10兆1450億円、1元=20円で換算、以下同様)、過去最高益は2018年12月期の373億9000万元(7478億円)。通期の売上高はその後、51%減収、8%減収と続き、2022年12月期の売上高は2300億6700万元(4兆6013億円)まで縮小している。
利益面では更に酷いことになっている。2021年12月期は4760億3500万元(9兆5207億円)の赤字転落、2022年12月期は1059億1400万元(2兆1183億円)の赤字継続だ。
業績悪化の直接的な要因は2020年8月から試験的に実施が始まり、2021年1月から政策として正式に実施されるようになった「三条紅線政策」(*)であり、この政策によって強制的にレバレッジを縮小させられたことであるが、それ以前の経営に重大な問題があった。
【*中国政府による不動産開発会社の借り入れに関する規制。資産負債比率が70%以下、自己資本に対する負債比率が100%以下、短期債務を上回る現金保有という3つの基準が示され、その達成度合いによって資金調達が制限される】