単独での事業存続は難しい
巨額赤字発生により2021年12月期の時点ですでに債務超過に陥っている。2022年12月期は買掛金や未払金などの1兆0023億元(20兆460億円)を中心に負債が2兆4374億元(48兆7480億円)ある。それに対して、開発中物件の1兆1361億元(22兆7220億円)を中心に総資産は1兆8383億元(36兆7660億円)しかなく、債務超過は5991億元(11兆9820億円)にのぼる。
開発中物件の中には、環境さえ良ければ数倍の価値を生む物件もあるだろうが、現状の不動産市況の低迷を考えればあまり期待できそうにない。
現在、国内の関係者が中心となって企業再建を進めているが、単独での事業存続は難しいだろう。まずは当局の強力な指導によって、厳しい利害対立を整理しつつ、資産をうまく解体し、それらを財務体質が健全な国有系不動産会社を中心に吸収させるしか方法はないだろう。
結局、無謀な拡大戦略が同社の危機の要因だが、それは程度の差はあるが、業界全体の問題でもある。決して恒大集団だけの特殊な問題ではない。
国内外の投資銀行が同社を巻き込み、内外で無理な資金調達をさせたということはなかっただろうか。行き過ぎた自由主義、市場経済が原因ではなかろうか。公平、公正、平等な社会づくりを目指す習近平体制にとって、自己の利益ばかりを追求し、人民の生活向上に資することのない不動産会社を許すことはないだろう。
国家がどんな犠牲を払ったとしても、社会主義国家としてふさわしくない企業を排除しようとしているのであれば当面、景気の回復は難しいのかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。