「生涯現役」が一般化する一方、「セミリタイア」「アーリーリタイア」といった言葉も市民権を得つつあり、老後のひとつの理想として「働かずに悠々自適の生活」を挙げる人も少なくない。しかし実践するには、潤沢な老後資金が必要だ。マネーコンサルタントの頼藤太希さんが解説する。
「確かに70才以降は月28万円あれば充分に生活できますが、仕事を完全にリタイアして趣味や旅行を楽しみたいのならば話は違ってくる。
例えば旅行は国内でも1回につき10万~20万円、海外なら30万~50万円が相場。年を重ねれば飛行機のエコノミークラスでの長距離移動は厳しい。安全で快適な海外旅行をしたいと思えば、100万円前後はかかることでしょう」
プレ定年専門ファイナンシャルプランナーの三原由紀さんも「旅行や趣味を楽しみたいのなら計画的に」と言い添える。
「65才時点の女性の健康余命は約20年。81才頃までに年1回、10万円で旅行しようとすると、生活費とは別に少なくとも150万円以上は必要。あくまで生活が苦しくならないように計画しておいてほしい」(三原さん)
働かずに少ない資金で悠々自適の老後を体現したいという希望を叶えるために、支出を減らすべく暮らしそのものをサイズダウンすることもひとつの手だ。
自身も都心から少し離れた埼玉県所沢市に住み、「トカイナカ」生活を満喫しているという経済アナリストの森永卓郎さんが言う。
「大都市で暮らしてきた人なら、それを捨てれば簡単に生活費は下げられる。私が提唱する都会と田舎の中間である『トカイナカ』で生活すれば夫婦で月10万円あれば充分楽しく暮らすことができます。
都会すぎず、それまでの人間関係や利便性も大きくは損なわずに、ムダな出費を抑えた生活ができるはずです」(森永さん)