昨今、コンプライアンス意識の高まりから、多くの企業でハラスメント対策が行われている。男性中心の職場環境であっても、女性への配慮は欠かせない。そうした意識は特に大企業では浸透しつつあるように見えるが、地方都市に行くと、まだまだ“昭和の価値観”が当たり前のように残っているケースもあるという。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、知人の30代女性から聞いた話をもとに考察する。
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クミコさん(30代前半・仮名)は、デジタル関連の運用をする東京の広告会社社員です。ここしばらく、とある地方都市の公共的な団体(役所+その他公共的な組織)のデジタルPR及び情報発信の業務に携わっています。その団体の主要なメンバーは12人いて、うち、女性は4人。会議はリモート中心なのですが、大学時代、バリバリの体育会にいた男性・A氏(40代後半)がその団体の代表として仕切っています。
リアルで全員が集まる会議はそれほど多くないのですが、普段のリモートの時に全メンバーが揃うとA氏は「おっ、今日は女性が4人もいて華やかですね」なんて平気で言う。クミコさんはメインプレイヤーのような存在で他の3人の女性は、役所の外注先会社営業担当アシスタントと、一つの公共的組織のメンバー2人です。そんな普段は接点の少ない女性たちに近況報告をさせるのがお決まりです。クミコさんに対しては、何かにつけて「さすがは都会のキャリアウーマンですね」なんて言う。
ある時の会議でX(旧ツイッター)の収益化の話になり、その団体にもX社からお金が振り込まれる可能性があるのかクミコさんが聞かれ、「う~ん、そもそも私たちの公式Xにその資格があるかは分かりませんね」と言うと、A氏はこう来る。
「クミコさん、ひろゆきさんですら月に36万6000円だったそうですよ。我々がXをやってもそんなに行くわけないでしょうね。それ、知ってましたか?」
このように、クミコさんの専門分野であるデジタル関連業務について、事情通マウンティングを仕掛けてくる。他の会議参加者はA氏に対しては常にお追従の愛想笑いをするか「へ~、ひろゆきさんですらそのぐらいなんですか! じゃあ我々じゃ1000円もいかないかもしれませんね」「ハハハハハハ(皆の笑い声)」という展開の中、クミコさんだけが憮然としている状況だったと言います。