新刊『過剰反応な人たち』でコロナ禍を通じて社会の空気感に振り回される人々を鋭く批評したネットニュース編集者の中川淳一郎氏。そんな中川氏は、市井の人が語る自身の家族間や友人間、職場などでのモヤモヤ話を中心に集めた吉田みく氏の著作『誰にだって言い分があります』を読み、そこに登場する人物について「こんなケチな奴らとは友達になれない」と強く思ったという。中川氏と吉田氏が我が身を振り返り、自身の「お金の使い方」について語り合う。【全3回の第2回。第1回から読む】
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中川:今回、これまで書き続けてきた記事がまとまって本になったわけですが、そんなケチな奴ばかりに取材しているわけですよね。ズバリ、楽しいですか?
吉田:自分が背伸びしなくて付き合えるというか、話を聞けるのがいいですね。グルメや買い物など、お金を使う場面の話題で、言葉ではセレブっぽいことを言っていても、実際に行動に移せない人のほうが大半で……。
中川:確かにそうですね。そういう人のほうが人間味があるとも言える。オレは友達になれないけど、でも、そんなケチぶりを隠さない態度は正直でいいと思います。だって、インスタグラムに高級店の写真をアップする人だって朝食はアンパンと牛乳だったりする。それらはアップしない。本当は多くの人はケチな小市民なんですよ。あ、でも敢えて木村屋のアンパンをアップするかもしれんな。
ところで吉田さん自身のお金に関する考え方はどうですか。例えば、後輩だったら奢るか奢らないか、たまにはミシュランの星付きレストランに行きたいかどうか、とか。
吉田:私は30代前半ですが、後輩や年下の人とランチに行く機会などがあれば、見栄を張るとかではなく、できる範囲で相手の分のお金も払います。
ミシュラン店に行く機会は基本的にないですが、1万円くらいする高級なお店には、仲の良い子とでしたら一緒に……。でも、私はそこまで高級なものの味の違いがよくわからないこともあって、「もったいないな」って思っちゃうことがあるんです。
中川:その感覚が一番大事だと思います。自分が好きな店に行けばいいんですよ。権威がどれだけお墨付きを与えたかよりも、「私が好き」というほうが絶対いいと思うんです。
吉田:私も、自分が好きなものに対してお金を使った時に満足を感じます。普段着る洋服も、ブランドにこだわるより「好きかどうか」で選んでいます。