匿名のSNSではなんでも言えるが、面と向かっては当たり障りのない会話ばかり。そんな風潮に慣れた私たちが、話がストレートに通じない厄介な隣人とうまく付き合うにはどう振る舞えばいいのか──。新刊『過剰反応な人たち』でコロナ禍を通じて社会の空気感に振り回される人々を鋭く批評したネットニュース編集者・ライターの中川淳一郎氏と、とかく“自分にとっての正義”を振りかざしがちな市井の人々のリアルな声を集めた『誰にだって言い分があります』を上梓したライター・吉田みく氏が、自らの「小市民的金銭感覚」について語り合った。【全3回の第1回】
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中川:著書を読ませてもらいましたが、小市民的なセコい話が多いですね(笑)。友人と酒を飲むのにコスパばかり気にする若い男性とか、フリマアプリでの売買に必死になる主婦とか……。これを読んで、私と吉田さんの金銭感覚が結構似ている気がしました。勝手な想像ですが、吉田さんもケチですよね?
吉田:ありがとうございます。はい、ケチです、私(笑)。普段の買い物でも、ポイントがいくら貯まるとか、どこでどんな安いものを買うかというところに、生きがいを感じています。
中川:私が住んでいる佐賀ではいろいろなスーパーのチラシが新聞に入ってくるからよくわかりますが、今年に入ってからは卵の値上がりがすごいですね。去年までは10個入り168円〜218円ほどだったものが、300円前後が当たり前になったでしょ。表面上の金額を安くするために8個入り238円とか、6個入り198円で売ったりしている。
吉田:本当です。玉子焼きも気軽に作れないほど、我が家では卵を高級食材として扱っています。だからスーパーでは値引きされている商品を狙って買います。値引きの有無は、最初にチェックする項目になりました。
中川:本書に紹介されたエピソードを読んで、そういう小市民っぽい感覚が吉田さんにもあり、そこが私と似ていると思ったわけです。