世の中には犬派と猫派がいて、それぞれが犬や猫の素晴らしさを語り、ときに争いになったりするが、この件については犬派に軍配が上がりそうだ。
今年10月、「犬を飼っている人は、飼っていない人と比較して、認知症になるリスクが40%低い」とする学術論文が発表された。米医学誌『Preventive Medicine Reports(予防医学レポート)』12月号に掲載された研究(*)で、1万1194人の高齢者(平均年齢74.2歳)を対象に、犬・猫の飼育と認知症との関係を調査した結果だという。一方、猫については認知症のリスク低減は2%で、ほとんど効果がなかった。
なぜ犬を飼うと、認知症のリスクが下がるのか。低減効果のない猫の飼育と比較すれば、おのずと理由が浮かび上がってくる。犬の飼育と猫の飼育の大きな違いは、「散歩」に連れて行くかどうかである。
論文の筆頭著者で、国立環境研究所の谷口優・主任研究員(環境リスク・健康領域)はこう説明する。
「日常的な運動習慣や社会参加は、認知症に限らず、フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)や要介護になるリスクが低いことは、以前からよく知られています。しかし、毎日のウォーキングを習慣づけたり、普段から近所付き合いをしていないのに人と交流をしたりするのは、意外に難しいものです。
犬を飼っていると、雨が降ろうが雪が降ろうが、毎日散歩に連れて行く必要があり、毎日犬を連れて散歩していると、同じ犬連れの人に会い、自然に挨拶を交わし、“犬友達”になったりします。つまり、犬を飼うと、半ば強制的に運動習慣ができ、社会的な孤立を避けられるようになることが多いのです」
犬を飼った経験のある人ならわかるかもしれないが、猫に比べると犬を飼うのは手間がかかり、生活も犬中心になりがちだが、その大変さを強いられることにより認知症予防になるというわけだ。