総額6億ドル(約900億円)とも言われる大谷翔平(29)の移籍交渉が佳境を迎えるなか、スポンサー企業もその対応を迫られている。スポンサーの出稿先は、大谷本人だけでなく「球団」という選択肢のひとつ。球団への広告としてわかりやすいのは、本拠地球場の看板広告だ。
エンゼル・スタジアムを見渡すと、実に多くの日本企業の広告が見られる。大谷が2番・投手で先発出場して10勝目をあげた8月10日(現地時間9日)のジャイアンツ戦で、バックネット裏の広告スペース(攻守交代ごとに変化)に出稿した企業は、全11社中10社が日系企業(大谷が投げた1~6回表)。7回以降では、日系企業は全9社中4社に留まり、大谷が投げるイニングに日系企業が集中して出稿していることが明らかになった。
試合終了までに広告が表示された日系企業は16社。そのなかには興和や西川など、個人スポンサーとの「W出稿」をしている企業もあった。
興味深いのは、エンゼルスが守備に就き、大谷がマウンドにいるであろう試合前半の掲出が多かったことだ。一方、試合が後半に進むにつれ、日系企業の看板は明らかに少なくなった(別掲表参照)。大谷効果を狙う企業にとって、気になるのは移籍の有無だ。スポーツジャーナリストの広尾晃氏が語る。
「思い出されるのはイチローのケースです。長く在籍したシアトル・マリナーズの本拠地セーフコ・フィールド(当時)に広告を出す企業にとって、2012年7月のヤンキースへのトレードはまさに青天の霹靂で、結果としてユンケルの佐藤製薬をはじめ、球場に広告を出す企業がヤンキースタジアムに乗り換えました。
日系企業がメジャーの球場に広告を出すのは日本国内の中継で映し出されることが大前提なので、エンゼルスの試合が放送されなければ意味がないでしょう。契約状況や移籍先にもよりますが、大谷選手が移籍する場合、エンゼルスと契約する企業は、移籍先の本拠地との契約に五月雨式に乗り換えるかもしれません」