ところが、死因贈与には遺贈の規定の適用があります。この遺贈とは、遺言によって死亡時に遺産を特定の人にあげることです。
遺言は遺言者の死後、その相続人でも変更はできません。そうすると、書面によらない死因贈与であっても、相続人は贈与を否定できないということになるのです。
よって友人の遺族が腕時計を惜しみ、あなたに渡したくないと思っても、理屈の上では引き渡しを請求できることになります。
ただ、死人に口なしです。遺族が贈与の約束を否定したり、その約束があっても、それは普通の贈与で、故人は解除できたのだから、相続人として贈与を解除するなどと反論されたら面倒です。ここは友人との関係を説明し、穏やかに頼んでみたらいかがでしょうか。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2023年12月22日号