いまや通信・通話回線の選択肢は大手キャリアだけではない。UQモバイルやワイモバイルなど、大手キャリアのサブブランド以外にも存在感を示しているのは、他社回線を借りて格安SIMを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)だ。
総務省の資料によると、2023年3月時点でMVNOの事業者数は1783。右肩上がりで伸びており、2018年3月(1141)から約6割増加した。選択肢が増えたことで自分に最適なサービスに出会える人がいる一方、理想の通信・通話環境を求めて、乗り換えを繰り返してしまう人もいるようだ。どんな事情があるのか。“SIM沼”にハマった人たちに聞いた。
“私史上最高の組み合わせ”を求めて1台のスマホで2社契約
メーカー勤務の30代男性・Aさんは、大手キャリアから格安SIMに初めて乗り換えた時のことを振り返る。
「大手キャリアから格安SIMにした時、通信料金が7000円代から1000円くらいになりました。こんなに安くなるのか……と感動したことを覚えています。当時、キャリアには2年縛りや解約金があったのに、格安SIMはそうした縛りはほとんどなく、気軽に試して自分に合わなければ移動できる自由さに惹かれました」
大手キャリアの“囲い込み”から脱出したAさん。それは同時に“沼”の始まりでもあった。これまでキャリアでは4大キャリアをすべて経験。大手キャリアのサブブランドではUQモバイル、LINEMO、povo2.0。格安SIMではLINEモバイル、日本通信、IIJmio、mineo、OCNモバイルONEに乗り換えてきたという。
乗り換えというと、手続きの面倒さや事務手数料などの“余計な”費用負担をイメージしがちだが、Aさんは「そんなことはない」と言う。
「手続きはウェブで完結するし、Amazonでエントリーパッケージを数百円で買えば、初期手数料が無料になることもある。物理SIMではなくeSIMなら最短で即日乗り換えることもできます。面倒とは思ったことはないです。むしろ、対面で話を聞くほうが面倒というか……。今より通信や通話環境が良くなる期待があるので、ワクワク感のほうが大きいです」(Aさん)