人生の最期の時をどう迎えるか──。医療施設に入るか、それとも自宅で過ごすか。その選択は残り少ない人生を大きく左右する。医師に言われるがまま入院を選択すると、「過剰医療」を受けることになりかねないからだ。訪問医の岩間洋亮氏(心越クリニック理事長)が言う。
「脳梗塞などの発症後に療養型施設に長期入院すると、何かあれば即座に対応してもらえる半面、口から食べられないと判断されるとすぐ胃ろうの造設などによる人工栄養が検討される。呼吸がしにくくなれば気管切開による人工呼吸などが選択されやすく、過剰医療に陥るケースがあります」
それらの処置は体力の衰えを招くだけでなく、“外すに外せない”状況になることが多い。『なんとめでたいご臨終』の著者・小笠原文雄医師(小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長)が言う。
「医師は患者に栄養を与えることで安心しますが、患者からすれば、回復の見込みがないのに延命治療を受けた結果、肺水腫などで溺れるように亡くなるケースもある。病院は若い医師への教育もあり、高齢者にまで『その後、数十年生きること』を前提にした医療をやるので、過剰にならざるを得ないのです」
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