「先輩、主任主事になりました!」
だいたい世の中の肩書を見るにつけ、「補佐」「心得」「代理」「副」だのに加えて、横文字の「アシスタント」「バイス」「サブ」だのもある。
ある時、某県庁に務める後輩から「主任主事になりました!」という連絡を受けました。実はこの後輩も、県庁の役職が意味不明の形式主義になっていることを実感しています。どうも彼の言うことを聞くと、自治体によって異なることもありますが、だいたい以下のような序列になっているようです。
・主事:入庁した後にまず与えられる役職
・主任:その次の役職
・主査:その次の役職
・主幹:その次の役職
このようなことは聞いたのですが「主任主事」とは一体何なのか? 「“主事”でエラい人」なのか「“主任”でエラくない人」なのかが、まったくよく分からなかった。
かつてクリエイティブ業界でも「ハイパーメディアクリエーター」という肩書が一切意味が分からん、と話題になったことがありましたが、役所や一般企業でも同様に分からない肩書は存在するのです。
最高経営責任者を意味する「CEO(Chief Executive Officer)という肩書が2000年代前半に取り沙汰されて以降は、「COO」など様々な「C」と「O」を使った役職も花盛り。
大企業だけでなく、中小企業もこの「C」と「O」を使う役職を出すようになった。その結果、今では「CRO」なんてのも登場。これらを見てみるともう無茶苦茶なんですよ。「R」の意味を調べてみると、企業によって「Revenue(収益)」やら「Risk(リスク)」やら「Remote(リモートワーク環境を整える)」やら色々で、一口に「CRO」が何かなんて、到底説明できっこない。
しかも、「部長になれなかった営業マン」を「アカウントスーパーバイザー」やら「シニアアカウントエグゼクティブ」みたいな役職にする風潮もある。
もう、いい加減、「役職のインフレ」「すごそうな役職を無理矢理作る」はやめてほしいです。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など多数。最新刊は『日本をダサくした「空気」』(徳間書店)。