共同住宅の住みやすさは、住民がルールを守って初めて成立するもの。廊下に私物を置くことをNGにしているマンションやアパートは多いが、これを守れない人もいる場合、どう対処すれば良いのか? 実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
マンションの共用部分である廊下の使い方について相談です。隣の住人は、廊下に宅配の荷物や子供の遊具などの私物を置いていたり、傘をいつまでも開いて干しっぱなしにしたりしています。見た目が乱雑なのも嫌ですし、通行の妨げになるため管理会社に注意してもらっても一向に改善しません。何度言っても改善されない場合、罰を与えてもらうことはできないのでしょうか。(55才・主婦)
【回答】
ご質問のケースは、分譲マンションと賃貸マンションとで対処が異なります。まず、分譲マンションの場合、廊下は共用部分として区分所有者全員の共有です。その用途は、居住者が通行することですから、物置き代わりに使うことは用途違反です。物を置いて通行を妨げれば、区分所有者が廊下の充分な利用ができないことはいうまでもなく、非常時などの安全を損なう危険な行為で、区分所有者が共通して有する利益を侵害する行為です。
区分所有法は「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」と定めています(区分所有法第6条第1項)。
私物を廊下に置き、何度注意しても聞かない住人はこれに違反しています。住人が法第6条第1項に違反したり、その恐れがあるときは、「他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる」と定められています。そして、請求を実現するために区分所有者の集会(管理組合の総会)で過半数の同意を得れば裁判提起もできます。