受験シーズンが到来するなか、保護者の関心は「合否」ばかりではないかもしれない。今春から、東京や大阪では高校授業料の負担に大きな変化が見込まれているからだ。高校授業料無償化の先にある教育の未来とは──。【前後編の前編】
全国的に高校授業料はすでに実質的に無償、もしくはそれに近い状態になっているが、来年度は東京・大阪でさらに制度が拡充される予定だ。大阪府では所得制限なしで公立・私立を問わず授業料(年間の上限は63万円)を公費負担とする無償化策を来年度から段階的に実施する。同じく東京都の小池百合子知事は昨年12月5日、年収910万円未満の世帯を対象に最大47万5000円まで支援する同制度の所得制限を来年度から撤廃する方針を示した。
都では制度による支援対象が拡大されるが、文部科学省によれば、すでに何年も前から、約8割の家庭が授業料無償化の恩恵に与って(高等学校等就学支援金制度を利用して)いる。子供を持つ親からすれば、教育費の家計負担の軽減につながるありがたい政策と言える。
しかし、授業料無償化は“いいことばかり”と言えるのか。教育費の無償化議論は、主に「少子化対策」や「経済格差是正」という側面から語られることが多い印象で、それが教育現場にどんな影響を与えているかについて聞く機会は少ない。
そうしたなか、塾講師のX(旧Twitter)アカウントとして知られる「東京高校受験主義」氏が小池知事の無償化策発表当日である12月5日にポストした内容が、一時、話題になった。その投稿を要約すると、以下の通りだ。
授業料無償化で、これまで「私立はお金がかかる」という理由で、公立を併願し、2月まで受験勉強をしていた層が、偏差値40〜50の私立を推薦で単願受験するようになった。(すると、中学3年の)11月ごろに進学先が決まるのでそれ以上、受験勉強する必要はない。同じ境遇の「遊び放題グループ」を形成して中3の後半を過ごし、遊びぐせが抜けないまま進学するので高校入学後、ドロップアウトする子が増えている(要約終わり)。
高校授業料の無償化で、進路選択によっては中学3年の途中で学習放棄をするケースが増えているとの指摘である。もしこれが真実なら、「高校授業料無償化」の意図しない結果と言えるのではないか。