田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国「日経225連動型ETF売買停止」でも日本市場への影響はなし 中国市場の仕組みから読み解く日中市場間の資金の流れ

華夏野村日経225ETFの日足チャート(TradingViewより)

華夏野村日経225ETFの日足チャート(TradingViewより)

A株市場、香港市場から海外資金が抜けるルート

 日本市場と中国市場の関連で気にすべきことといえば、海外投資家がこれまで中国株に投資してきた資金が抜けて、それが日本株に向かうこと、あるいはその逆が起きることについてであろう。

 中国本土A株市場から海外資金が抜けるルートも、もちろん存在する。ストックコネクト制度を通した外国人のA株買い残高は1月22日現在、1兆7400億元(35兆8440億円)あるが、歴史的には増加傾向にある。ただ、この半年間(2023年7月24日~2024年1月22日)に限れば流出が目立ち、純流出額合計は1731億9000万元(3兆5677億円)に達している。とはいえ、残高と比較すれば1割にも満たない。適格海外機関投資家制度(QFII)を通した海外資金については実態がつかみにくいが、売却に関して実質的な規制が存在することを考えれば、大きな額ではなさそうだ。

 一方、香港市場から資金が抜けるルートもある。香港市場は欧米機関投資家が中国投資の窓口として育ててきた市場であり、こちらの方が影響は大きい。中国株は成長期待で買われる銘柄が多く、その点でかつて、香港ハンセン指数はNASDAQとの連動性が高かったが、トランプ政権時代、中国に対して懲罰関税を実施し始めた2018年春以降、その連動性は低くなった。その後、海外投資家に対する中国株投資を抑制する政策をはじめ、数々の対中強硬策の影響もあって、香港ハンセン指数はNASDAQに対してはっきりとアンダーパフォームするようになった。この間に流出した資金の一部が米国市場や、日本市場に流れ込み、恩恵を受けたといった見方は正しいだろう。

中国不動産市況の回復遅れが資金流出につながっている

 ただ、流出要因について、昨年春以降は、中国景気の回復が期待外れであることによる影響が大きい。その背景にあるのは中国の不動産不況である。

 この不動産不況は政府主導による。2010年代後半からより厳しい不動産購入制限が導入されはじめ、2020年からは新型コロナ禍とゼロコロナ政策、2021年には財務面からの容赦ない業者への締め付けが加わり、2021年夏以降、暗転した不動産市場は現在も悪化が止まらない。

 習近平政権は貧富の差の拡大を招く米国型金融資本主義を嫌い、より平等、公平、公正な社会の形成を推し進めようとしている。社会主義国家として許容できないレベルの贈収賄を繰り返し、違法に私腹を肥やす民間不動産企業の経営者たち、制度が強化される前に巨額の資産を獲得、投機を成功させた多くの不動産成金に対する徹底した粛清がまだ終わっていないのだろう。

 ただ、それも行き過ぎると経済全体への影響を懸念せざるを得ない。どこかで粛清の手を緩める時が来るはずだ。

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