「孫にも一目置かれる存在」を目指して結成されたeスポーツのプロチームがある。それが「マタギスナイパーズ」。平均年齢67歳という異色のチームだ。2019年にeスポーツ事業に本格参入したエスツー(秋田県秋田市)が運営する。同チーム監督の「れもん」さんはこう話す。
「日本一高齢化の進む秋田県で、若者文化であるeスポーツに挑戦する高齢者が増えれば、日本一元気な県になるはず。そんな発想で3年前に発足しました。当初は65歳以上限定の募集だったのですが、2年目からは60歳以上に引き下げて募集しています。現在は61歳から75歳の精鋭11人が活躍してくれています」
シニアチームだからといって、認知症予防のためにやっているわけではない。あくまでも本気で試合の勝ちを狙いにいっているという。
「練習は月曜日から金曜日までの週5日間。13時から17時までの4時間は合同練習で、それ以外に毎日3時間の自主練をやっています」(れもんさん・以下同)
合同練習といっても、どこかに集まるわけではない。メンバーそれぞれが自宅からリモート参加する。
「パソコンすら使えない人もいたので、はじめは会社に集まってもらって指導していたのですが、今ではメンバー全員がゲーミングPCやキーボードなどを自宅に設置し、リモートで会話をしながらやっています。練習後の反省会では、それぞれの課題を検討し、勝つためにはどうすればいいのか、真剣に語り合います」
本気度の高さに「思っていたのとは違った」と離れていったメンバーもいたという。主にプレイするのは主人公目線で銃器を撃ち合うFPS系(First Person Shooter)の『VALORANT』というゲームだ。
「『VALORANT』は世界的にもプレイヤーの多いゲームです。FPS系のゲームは動きが早く、瞬発力や動体視力の良し悪しが勝敗に大きく影響します。プロの中心的なプレイヤーは20代が多く、30歳くらいで引退する人もいる。そんなゲームをシニア世代がプレイしているというのは、全世代のゲーマーにとって励みになっていると思います」