楽天グループの2023年12月期決算は5期連続の赤字となった。しかし、「楽天モバイル」の業績改善などで赤字幅が縮小したことなどが好感され、株価は一時ストップ高に。グループを率いる三木谷浩史会長兼社長はさらなる攻勢をかけるべく、世界最大の通信の祭典へと飛び立った。その激動の3日間の様子を『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』の著者があるジャーナリスト・大西康之氏がレポートする。(文中一部敬称略)
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世界最大の携帯電話見本市、MWC(モバイル・ワールド・コングレス)が2月26日、スペインのバルセロナで始まった。世界各地から2400社を超える通信関連企業が出展し、最先端の技術を一目見ようと10万人近くが訪れる。会場のあちこちでトップ同士の商談が繰り広げられ、大型の提携が生まれることもある。日本企業も数社が出展しているが、3日間にわたって広大な会場を歩き回った筆者が見る限り、ブースが賑わっていたのは1社だけだった。
ここ数年、バルセロナで圧倒的な存在感を示しているのが中国の通信機器大手、ファーウェイ(華為技術)だ。2018年に創業者の娘で副会長の孟晩舟氏がカナダで逮捕(2021年に司法取引で解放)され、2019年には米政府が禁輸処置の対象にするなど、米中経済摩擦の象徴になった企業である。
その直前まで、安くて高性能のファーウェイのスマホは世界市場を席巻し、携帯電話ネットワークの構築に不可欠な通信機器も飛ぶように売れていた。米国や日本は高性能の半導体の輸出を止めることなどで、ファーウェイの力を削ごうとした。実際、一時的にファーウェイの業績は落ち込んだが、その後、半導体など基幹部品の内製化に成功し、新興国を中心に再び輸出を伸ばしている。