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《株価はストップ高》楽天モバイル・三木谷浩史会長がグーグルより早く見抜いた「衛星モバイル」の可能性

都内で会見した楽天モバイルの三木谷浩史会長と米ASTスペースモバイルのアベランCEO

都内で会見した楽天モバイルの三木谷浩史会長と米ASTスペースモバイルのアベランCEO

 楽天モバイルは2月16日、同社が出資している米ASTスペースモバイルの衛星を使う衛星モバイル・サービスを2026年中に日本で開始すると発表した。低軌道を回る衛星と市販のスマートフォンがダイレクト通信するタイプの衛星モバイル・サービスは世界初。地上にステーションを置くタイプで先行するイーロン・マスク氏率いる米スペースXの「スターリンク」の追撃を狙う。楽天モバイルは苦境を報じられることも多いが、三木谷氏はその先に何を見据えているのか──。『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』の著書があるジャーナリスト・大西康之氏がレポートする。(文中一部敬称略)

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 衛星モバイルは屋外で使う場合、地上600kmの宇宙空間で周回する衛星と地上のスマホを遮るものは何もない。このため山奥でも離島でも、空が見えていれば確実に電波が届く。地上の基地局ではカバーしにくい、これらの場所を網羅するためサービスが始まれば、楽天モバイルの国内の「面積カバー率」は100%になる。

 通常、携帯電話でカバー率といえば「人口カバー率」を指す。人のいる場所をどれだけ網羅しているかを示す人口カバー率は、楽天モバイルを含む携帯4社がいずれも99.9%に達している。人のいない山奥や離島を含み国土全体のどれだけを網羅しているかを示す面積カバー率は70%程度に留まる。面積カバー率100%はいつでも、どこでも携帯電話が繋がる究極のユニバーサル・サービスと言える。

 ただし、天空から降る電波は縦方向の遮蔽物に弱い。例えば50階建てのビルの地下だと、50枚の床を貫くことになるため、電波が減衰してつながりにくくなる。楽天モバイルは地上の基地局を使う在来の通信と、衛星モバイルを組み合わせることで「どこでも確実につながるシームレス(継ぎ目のない)なサービス」を目指す。

「25mプール」を宇宙に浮かべる

 衛星モバイルのもう一つの強みは災害対応だ。地震や津波で基地局が破壊された被災地では携帯電話がつながらなくなる。現在、携帯各社はトラックにアンテナを積んだ移動式基地局を被災地に派遣して対応しているが、衛星モバイルならスマホの充電さえできれば被災地でも通信できる。スペースXは自社のロケットを使い、2023年9月時点で3000機超の衛星を打ち上げた。戦火で通信インフラが壊滅したウクライナを含む世界45か国で衛星モバイルのサービスを提供している。

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