日経平均株価は3月4日、4万円に到達した。今年に入ってからの上昇は大方の予想を上回る勢いだが、この大相場を牽引しているのは半導体製造装置メーカーである。年末から4日にかけての株価上昇率(終値ベース)をみると、設計・前工程で用いられる製造装置を手掛けるスクリーンが63.5%、東京エレクトロンが55.6%、後工程のアドバンテストが53.8%、ディスコが47.3%上昇しており、この間の日経平均株価上昇率の19.9%を大きく上回っている。
半導体製造・検査装置が買われる理由は、半導体需要が今後、大きく伸びると予想されるからだ。ChatGPTの登場によって生成AIの分野で革命的な技術進歩があり今後、AIがあらゆるモノ・サービスに浸透し、世の中を大きく変えるだろうと予想されている。
グローバルで起きているAI革命が新たな需要を作り出し、日本もその恩恵を受けられるというストーリーであるが、本当にそうだろうか。
日本が得意とするのは、半導体を製造するための装置であり、また、半導体を作るための素材である。サプライチェーンでいえば、上流あるいは中流に位置する部分に強みを持つのが日本である。もちろん、この連鎖において日本企業は無くてはならない存在であるには違いない。しかし、AI革命によって世界全体で発生する付加価値の分け前はそれほど多くないはずだ。より下流に位置する半導体の製造を請け負うファンドリーや、その上位にある半導体メーカー、AI開発関連企業など、より最終ユーザーに近い部分に位置する企業がAI革命の成果をより多く獲得するだろう。
3月1日時点で東京エレクトロンの時価総額は、トヨタ、三菱UFJに次ぐ国内3位で18兆1013億円(1207億ドル相当、1ドル=150円で計算、以下同様)だが、世界最大のファンドリーである台湾のTSMCは6945億ドルで東京エレクトロンの5.8倍だ。半導体ではエヌビディアが世界3位の1兆9778億ドルで16.4倍、AI開発で最先端を走るマイクロソフトは世界最大の時価総額を誇り3兆735億ドルで25.5倍である。
こうした企業と比べると東京エレクトロンの事業規模、利益水準、利益見通しなどは決定的に小さく、それが時価総額の差につながっていると考えられる。日本経済の本格的な復活を期待するのであれば、たとえば半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスあたりが規模の上でTSMCやサムスン電子に如何に迫ることができるのか、AI開発の部分で日本企業が一矢報いることができるのかといった点が、より重要になってくるだろう。