今年の日本の株式市場を見ると、2月22日には日経平均が1989年以来の最高値を更新。また、3月4日には日経平均が4万円の大台を超えるという記録ずくめのマーケットが続いている。
そして、アメリカ経済は、利下げ観測はどこ吹く風のように、全く消え去っている。はたして今後はどうなっていくのか。現状の経済情勢の定点観測を踏まえて、今後の行方を展望してみよう。
アメリカ経済の現況
アメリカでは昨年末に高まっていた利下げ機運はほぼなくなっている。これは裏を返せば、アメリカ経済が強いことを意味している。
これまで急ピッチで進んだ金融引き締めに対して、アメリカ経済は景気後退に陥らずにソフトランディングする方向に向かっている。この牽引役となっているのがAIの分野である。
生成AIに不可欠なGPUの圧倒的シェアを持っているのが、エヌビディア(NVDA)だ。同社は生成AI利用の急速な拡大を背景に大幅な増収増益を実現しており、2月21日の決算において売上は前年同期比で3.7倍となる221億300万ドル(約3兆3100億円)と発表した。最終益は、前年同期比で8.7倍となる122億8500万ドル(約1兆8400億円)。この決算を受けて日本のハイテク関連銘柄も上昇し、日本の株式市場では翌日2月22日に、日経平均が最高値を記録することとなった。
このAIブームは経済全般にも影響を及ぼしている。3月5日に発表されたISM非製造業景況指数では雇用指数が予想51.4に対し48と大きく予想を下回り、前回発表の50.5と比較しても悪化していることがわかる。また、ISM非製造業価格は予想62に対し58.6と予想を下回り、前回の64を大きく下回っている。
今までのインフレ時の傾向を踏襲するのであれば、雇用も価格も悪化しているのであれば経済の需要が減退しているのかと考えるところだが、購買担当者の景況感を示す非製造業PMIは52.6と節目の50をしっかりと超えている。
ここから、AI活用による省人化で雇用指数が悪化し、大量生産が可能になることによって価格下落につながっている、と考えることもできる。米国企業にとっては生産性向上に他ならず、景気を大きく悪化させない形でのインフレ解消、つまりソフトランディングを実現しようとしているのではないか。
日本経済の現況
日本の株式相場も活況である。日本の半導体銘柄に、エヌビディアのような爆発的な成長を実現している企業は見当たらないものの、株価は半導体などのハイテクセクターを中心に買いが集中している。これはまさにエヌビディア効果と言えるだろう。
そして、日本の経済環境も好転の兆しが見えてきている。円安ドル高傾向が続いているとはいえ、3月5日に発表された2月の東京都区部の消費者物価指数は対前年比+2.5%と、一時期4.5%に迫る勢いであったものが沈静化してきており、3月3日に発表された設備投資額は前年比16.4%と過去5年で見ても最も大幅な上昇幅を記録しており、賃上げ実現の環境は整いつつある。
岸田首相も首相官邸SNSを活用し、企業経営者に対して賃上げの呼びかけを行っている。長きにわたる金融緩和によりインフレ目標も達成し、日経平均株価も34年ぶりの最高値を更新。史上初の4万円台に突入した。新NISA(少額投資非課税制度)拡充なども追い風となり、ここから幅広い銘柄に買いが波及することも期待できるだろう。