社会主義と自由経済を融合させるのは並大抵のことではない。中国における長年の不動産バブルの拡大と足元での不況はそれを端的に表す事例ではなかろうか。
全人代活動報告において「不動産は住むためのものであって投資や投機のためのものではない」と初めて記載されたのは2018年だ。その後も1年空けて、2020年、2021年、2022年と3回にわたり、厳しく不動産投資、投機を抑制する方針が全人代で示されたが、この文言は2023年、2024年の報告では無くなっている。
今年の報告では不動産問題について「発展と安全をさらに上手に統一して計画し、重点領域におけるリスクを有効に防ぎ、解除し、不動産、地方債務、中小金融機関などにおけるリスクを“枝葉末節も根本も一緒に治し(原文は中国医療の専用語:標本兼治)”、経済金融の大局において安定を維持する」と記している。
不動産市場の膨張を強制的に押さえつけたことによって生じた副作用の解消に取り組む一方で国務院は、今年の経済成長について、5%前後といった現在の景気状況から考えると非常に高い目標を掲げている。達成には不動産市場の回復は必要不可欠だ。
地方政府が国家の支持に値すると判断した案件をリスト(ホワイトリスト)に掲載し、銀行に対して融資を促すといった都市不動産融資協調メカニズムが今年1月から実施されているが、当局によれば2月28日現在、実施地域は全国31省市自治区276都市に拡大しており、ホワイトリストに掲載されたプロジェクト数は約6000件、商業銀行による審査を通過した貸出額は2000億元(4兆円、1元=20円で計算)に達している。
供給側の目詰まりを防ぐ強力な措置が打ち出されているが、今後、現場の状況を当局が注意深くウォッチしながら、必要であれば第2弾、第3弾のリストがタイムリーに発表されるだろう。
需要側への対策としては、大都市を中心に課せられている厳しい購入制限を段階的に緩和したり、住宅ローン借り入れの際の頭金比率、ローン金利を引き下げたり、公的住宅積立金による支持を拡大したり、補助金の支給をしたりしている。さらに、銀行に対する住宅ローン貸出姿勢への窓口指導まで行っている。
農民と都市生活者との生活レベルの差を小さくすると同時に農業の近代化、大型化を進め、相対的に労働生産性の高い産業に労働者をシフトさせ、依然として国際的に低い水準に留まっている生産性を高めたい。そのためには今後も都市化率を引き上げる必要があるが、都市化を進めるにあたり、農村部や郊外から移り住む新住民に供給すべき住宅について、市場で提供される商品住宅に頼るのではなく、保障性住宅や、老朽化した住居の建て替え住宅(回遷房)など、国家支援による供給をより拡大させるような新しい不動産発展モデルが打ち立てられようとしている。