たしかに下田会長は研修冒頭のあいさつで、「みなさん70、80と言わず100まで働きましょう」と呼びかけていた。しかし長年働いてきたからこそ見えてくる課題もあるのでは?
「私が入った頃より会社の規模が大きくなって、この会場もあちらの端っこはもう姿が見えませんよね。そうすると全然面識がなくなっちゃって、勤務シフトの中でも会えない同僚というのが増えています。そういう時にちょっとしたトラブルというか、分かり合えないことがあると解決がうまくいかない。私たちは個人事業主だから、会社に相談しても『お互いに解決してもらうのがルールです』という答えが返ってくることもあります。ルールはルールでわかるんですけど、もうちょっと柔軟に対応してもらいたいな、という気持ちはあります」
それでも職場の魅力は大きいという。
「こういうふうに研修の後で交流があるっていうのはいいですよね。私たち管理員の仕事って普段は一人じゃないですか。グループとかチームじゃないから、こういうところで楽しく話して知り合いができるのは心強いです。一人で働いている時に何かあったらどうしようと心細い面があるんですけど、そういう時に会社がバックで助けてくれる。同じ仕事をする仲間たちとも相談ができる。そういう意味でみんなが集まる機会を作ってくださるのはありがたいと思います」
筆者が見た会社の気風
会社の良し悪しをどこで見るか? 私は「弁当」に見た。研修会は丸一日かかるので、昼休みには1000人を超える参加者全員に弁当が配られる。会長をはじめ経営幹部は、招待したマンション管理会社などの取引先とともに別室で昼食をとるという。それを聞いてふと思った。
「同じ食事だろうか?」
そこで管理員の人たちが食事をとる大ホールへ向かった。大量に用意されている弁当を確認した上で、経営幹部や取引先がいる別室を訪れると……、まったく同じ弁当だった。たかが弁当かもしれないが、そこに「働く人をおろそかにしない」気風を見た。では、冒頭のキャッチコピーへの下田会長の思いは?
「70代女子って日本の宝だと思うんです。女性のほうが元気で長く働けるわけですから、埋もれさせたらダメでしょう。だったら管理員として働いてみませんか? それで適度に稼げて、お客さまからも喜ばれ感謝されて、人生を楽しめますよ」
70代女子が輝く仕事。働く人を大切にする職場。急成長は、そんなところに秘訣があるのかもしれない。
取材・文/相澤冬樹(ジャーナリスト)