東京・港区の麻布界隈には、“麻布妻”と呼ばれる富裕層女性たちが住む。その中には高収入男性と結婚した人たちもいれば、代々、港区に住むお嬢様もいる。そんなお嬢様がパートを始めると言ったら、周囲の反応はどうなるのか? 実際にあった話を、自身も麻布妻でライターの高木希美氏がリポートする。
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「私ね、パートすることにしたの」──麻衣さん(仮名、以下同)の発言に、聞いていた一同が食いつきました。
麻衣さんは生粋のお嬢様。幼稚園からずっと私立の女子校。大学卒業後も就職せずにお料理教室に通い、大学卒業から3年後、東大出身の彼の仕事が落ち着いたタイミングで結婚しました。
実家が“太く”、今時まだいるのかというくらいおっとりしたお嬢様です。
「私ね、卒業してからもお小遣いを月40万円もらってて。結婚してからはもらわなくなったから苦労したの。けど、私たちのお家賃はパパが払っているから、実際に苦労したのは食費のやりくりとか、自分のお買い物をする分なんだけどね。でも、夫から聞いたら、世の中には月40万円でお家賃も入れてすべてのやりくりをする人がいるって言うからびっくりしたの」
悪びれもせずこんな発言をするので、麻布妻つながりのママ友・絵里さんや明子さんをピリピリさせていました。
絵里さんはバリキャリで、パワーカップルと呼ばれる共働き夫婦。絵里さんは大学から上京して、医者と結婚し麻布妻になりました。明子さんも、自分の年収こそ500万円程度と一般的ですが、夫は広告代理店勤務で共働きです。
以前、絵里さんと明子さんは“麻衣お嬢様”がいないところでこんな話をしていました。
明子さん「私なんか最初なにもなくて、昔は泥で遊んで虫を捕まえてたくらいだし」
絵里さん「田舎になんか帰りたくないから必死で徐々にお給料あげて生活維持してるのに」
明子さん「港区出身の港区育ちって最初から持ちすぎてて、何しても勝てないんだって思い知らされるよね」
絵里さん「羨ましいけどなんかイラっとする」
しかし麻衣さんには悪意はまるでなく、ただただ籠の中で守られて育ったゆえにまっすぐなだけ。それを2人も理解するようになり、“ピリピリ”も落ち着いていた矢先の「パートする」発言に、絵里さんと明子さんのスイッチはまたオンになりました。
「働くってなにするのー?」──そう絵里さんが笑顔で探ります。