かつて“女性が付き合うと幸せになれない相手”と言われた「3B」という言葉がある。美容師、バンドマン、バーテンダーの頭文字「B」を取ったものだ。とくにバンドマンは、苦学生やフリーターなど、金銭的に余裕のないイメージがつきまとい、漫画やアニメでも女性に金銭的援助を受ける、いわば「ヒモ」の典型例として描かれることも多かった。
バンドを続けることができるのは恵まれた環境にいる学生
しかし、Z世代のバンドマンはまったく異なる状況にあると話すのは、渋谷を拠点に活動するバンドのギタリスト・Aさん(21歳男性)だ。
「正直、貧乏バンドマンというのは過去のイメージです。僕が楽器を始めたのは幼少期ですが、その頃と比べても今は楽器本体や弦、スティックなどすべてのものの値段が高騰しています。たとえば、かつてはフェンダーなどの超有名ブランドのエントリーモデル(安価な商品)のギターが6万円くらいで買えた時代がありましたが、だいたい3万~4万円値上がりしています。それを買える時点で裕福なんですよね。
エフェクターなどの機材も含め、定価で買うことは難しい。ハードオフなどの中古ショップやメルカリなどの二次市場を利用して購入し、コストカットしています。そういう状況で、大学生以上でバンドを続けられるのは、もともと楽器を買ってもらえたような家の子どもばかりですよ」(Aさん)。
実際に、Aさんの周りは恵まれた環境にいる学生が多いという。
「そもそも、僕の周囲のバンドマンを見ても、バンドを続けることができているのは、ほとんどが社会人との掛け持ち、あるいは親に頼れる実家暮らしの大学生ばかりです。言い方は悪いですが、僕も含めて高学歴が多いことも事実。
僕は昨年から彼女と同棲しはじめたのですが、実家から出た瞬間にこんなに生活が苦しくなるとは思いませんでした。最近は電気代も高いし、家賃を払ったら何もできない。正直、首が回らなくなってきています。1枚100円程度のピックを買うのも悩ましく、結局、親と彼女に金銭的に支えてもらっています」(Aさん)